昇格・降格したクラブを、予想はどう見誤る? 約1万7千件で答え合わせ
昇格したクラブは、実績が少ないぶん低めに見られがち——そんな印象は本当でしょうか。検証予想17,019試合分を答え合わせすると、13試合目以降の昇格クラブはむしろ高めに、降格クラブは低めに見積もられていました。
昇格したクラブの試合では、「実績が足りないから、予想では低めに見積もられていそう」「1年目は苦戦するのでは」といった声をよく耳にします。降格したクラブにも、似たイメージがありますよね。
当サイトは、各試合の勝敗を確率で示しています。その確率は、昇格・降格したクラブでもきちんと合っていたのでしょうか。過去の予想と実際の結果を突き合わせて、答え合わせをしてみました。
まずは、結果から見てみましょう。
- 前のシーズンと同じカテゴリーで戦うクラブは、見積りと結果がほぼぴったりでした
- 昇格1年目の開幕直後は、件数が少なくて何も言えません
- はっきりずれていたのは、13試合目以降の昇格クラブ(高く見積もりすぎ)と、降格1年目のクラブ(低く見積もりすぎ)でした
「見積りが合っている」とはどういうことか
サッカーの試合は一つひとつが一回きりです。ある試合の予想が合っていたかどうかは、その試合だけでは確かめられません。そこで、たくさんの試合をまとめて見ます。
たとえば、勝率30%と見積もった試合を集めたとき、実際に3割くらい勝っていれば、その見積りは合っていると言えます。これを較正(キャリブレーション)と呼びます。それより明らかに多く勝っていれば低く見積もりすぎ、少なければ高く見積もりすぎです。
今回はこの考え方を、クラブのグループごとに当てはめました。「昇格1年目のクラブ」「降格1年目のクラブ」といったグループについて、見積もった勝率の平均と、実際に勝った割合を比べています。
「ポイント」と「誤差の幅(±)」
結果の表では、見積りと実際の差を「ポイント」で書いています。ポイントは「%どうしの差」のことです。たとえば見積りが40.9%、実際が43.4%なら、差は+2.5ポイントです。
差がプラスなら、見積りより多く勝っていた(低く見積もりすぎていた)ことを表します。マイナスなら、見積りほど勝てなかった(高く見積もりすぎていた)ことを表します。
「誤差の幅(±)」は、偶然による揺れの目安です。件数が少ないと、たまたまの勝ち負けで割合が大きく動きます。差がこの幅より小さいときは、偶然の揺れと区別がつきません。差がこの幅を超えているときに、はじめて「ずれている」と言えます。
何を確かめたか
使ったのは、過去の試合について計算した検証用の予想17,019試合分です。期間は2021年2月26日から2026年8月30日まで、J1・J2・J3のリーグ戦が対象です。過去のある試合を予想するときは、その試合の日より前のデータだけを使っています。
試合ごとに、両チームそれぞれについて「見積もった勝率」と「実際に勝ったかどうか」を記録しました。両チームの分を別々に数えるので、表の件数は試合数より多くなります。
クラブは、前のシーズンにどのカテゴリーにいたかで分けました。昇格1年目のクラブは、そのシーズンの何試合目かで「開幕6試合」「7〜12試合目」「13試合目以降」に分けています。
答え合わせの結果
| クラブの区分 | 件数 | 見積もった勝率 | 実際に勝った割合 | 差(誤差の幅) |
|---|---|---|---|---|
| 同じカテゴリーのまま | 28,176 | 36.7% | 36.6% | −0.1ポイント(±0.6) |
| 昇格1年目・開幕6試合 | 174 | 31.9% | 34.5% | +2.6ポイント(±6.9) |
| 昇格1年目・7〜12試合目 | 174 | 31.7% | 37.9% | +6.2ポイント(±6.9) |
| 昇格1年目・13試合目以降 | 2,370 | 32.1% | 28.4% | −3.8ポイント(±1.9) |
| 降格1年目 | 2,490 | 40.9% | 43.4% | +2.5ポイント(±1.9) |
差は「実際に勝った割合 − 見積もった勝率」です。表の%はそれぞれ丸めた値なので、表の数字どうしを引き算すると、差の欄と少しずれる行があります。
読み方その1:同じカテゴリーのクラブは、ほぼぴったり
前のシーズンと同じカテゴリーで戦うクラブは28,176件あり、見積もった勝率は36.7%、実際に勝った割合は36.6%でした。差は−0.1ポイントで、誤差の幅(±0.6)の中に収まっています。
件数の大半を占めるこのグループで見積りが合っていることが、ほかの行を読むときの基準になります。
読み方その2:昇格1年目の開幕直後は、何も言えない
昇格1年目の開幕6試合は174件しかありません。見積り31.9%に対して実際は34.5%で、差は+2.6ポイントです。ただ、誤差の幅が±6.9ポイントもあります。差が幅よりずっと小さいので、見積りが合っていたとも、ずれていたとも言えません。
7〜12試合目の+6.2ポイントは大きく見えますが、こちらも174件で、誤差の幅(±6.9)の中です。「昇格クラブは序盤、見積り以上に勝つ」と読むには足りません。
たとえばJ1に上がったばかりの水戸のように、新しいカテゴリーでまだ数試合しか戦っていないクラブは、ちょうどこの「何も言えない」範囲に入ります。
読み方その3:はっきりずれていたのは、13試合目以降の昇格クラブと降格クラブ
昇格1年目の13試合目以降は2,370件あり、見積り32.1%に対して実際は28.4%でした。差の−3.8ポイントになるのは、誤差の幅(±1.9)を超えています。シーズンが進んだ昇格クラブを、予想はむしろ高く見積もりすぎていたことになります。
降格1年目は2,490件で、見積り40.9%に対して実際は43.4%でした。差の+2.5ポイントも、誤差の幅(±1.9)を超えています。降格したクラブは見積りより多く勝っていて、予想は低く見積もりすぎていました。
「1年目は苦戦する」という見方について、この検証で分かるのは「予想の見積りと比べてどうだったか」までです。その範囲で言えば、13試合目以降の昇格クラブは、見積りほどは勝てていませんでした。
「実績不足だから低めに見ている」は当てはまらない
昇格クラブの予想については、「実績が足りないので、低めに見積もっているのだろう」と考える方も多いと思います。しかし当サイトの予想には、昇格したクラブの見積りを意図的に割り引く仕組みはありません。実測でも、はっきり出たずれはむしろ「高く見積もりすぎ」の側でした。
昇格1年目の行は、見積もった勝率がどれも同じカテゴリーのクラブより低めです。ただ、見積りが低いこと自体は、ずれではありません。合っているかどうかは、実際に勝った割合と比べて初めて分かります。
では何が起きているのか。当サイトの勝敗確率は、得点モデル(ディクソン=コールズ型)で両チームの入りそうな得点を見積もり、そこから計算しています。強さの点数(Eloレーティング)や休養日、調子は、確率の計算には使っていません。
得点の見積りに使うのは、そのクラブの過去の試合の成績です。昇格1年目のクラブでは、その大半がまだ前のカテゴリー、つまり下のカテゴリーで勝っていた頃の成績です。降格したクラブなら、上のカテゴリーで苦しんでいた頃の成績が大半を占めます。見積りは、その前のカテゴリーでの水準に寄っています。
試合ページでの注意書き
当サイトの試合ページでは、昇格した直後などで、そのカテゴリーでの試合がまだ少なく、見積りに使った成績の大半が別のカテゴリーのものになっているクラブに、「確度は低めに見てください」という注意を出しています。
この注意書きでは、見積りがどれくらいずれているかの数字は示していません。上で見たとおり、開幕直後については、この検証でもずれの大きさが言えないためです。
この検証で言えないこと
- 件数の少ない行は判断できません。 昇格1年目の開幕6試合と7〜12試合目は174件ずつで、誤差の幅は±6.9ポイントあります。昇格したばかりのクラブの見積りがどれくらいずれるかは、この検証からは言えません
- 過去データでの検証予想です。 過去の試合に当てはめて計算した予想の答え合わせで、試合前に公開してきた予想の成績ではありません。公開後の予想で同じ傾向が出るかは、この表からは分かりません
- グループの平均です。 多くのクラブをまとめた結果なので、特定の昇格クラブが高く見積もられている、とこの表から言えるわけではありません
- 時期による細かい変化は分かりません。 降格1年目は試合の時期で分けておらず、昇格1年目の13試合目以降もひとまとめです。シーズンのどのあたりでずれが大きいのかは、ここからは読み取れません
- ずれの理由の説明には推測を含みます。 見積りに使う成績の大半が前のカテゴリーのものであることは、材料の中身から言えることです。ただ、表のずれがどこまでそれによって生じているのかを、この検証で直接確かめたわけではありません
- 期間と対象が限られています。 2021年2月26日から2026年8月30日までの、J1・J2・J3のリーグ戦での結果です