運営者の雑感

90分まで2-2だった――長谷川唯と長野風花、マンC対リヴァプール4-2で残した数字

長谷川唯、長野風花、山下杏也加がフル出場した女子スーパーリーグ第3節。前半だけで4得点が生まれた一戦は、終了間際のオウンゴールとカウンターで大きく動きました。異なる方法で中盤を支えた2人と、6得点のゴール前に立った山下。その90分から、最終スコアだけでは見えない試合の揺れを追います。

夕暮れのスタジアムで、淡い青と赤の無地ユニフォームを着た選手がゴールへ向かう柔らかなイラスト
イラスト: OpenAI

時計が90分を指したとき、スコアは2-2でした。ところが、その数分後には4-2。終了間際まで並んでいた試合が、どうしてこんなに違う表情で終わったのか。今回は、その最後の数分を入口に、前半から続いた得点の流れと、長谷川唯、長野風花、山下杏也加がそれぞれの場所で担った90分を振り返ります。

2026年9月18日、ジョイ・スタジアムで行われた女子スーパーリーグ第3節。マンチェスター・シティはリヴァプールに4-2で勝ちました。決着を分けたのは、90分のグレース・フィスクのオウンゴールと、90+5分のローレン・ヘンプの得点です。

結果だけを先に見れば、シティが余裕を持って勝ったようにも映ります。でも、90分まで引き分けだったと知ると、同じ4-2が急に落ち着かない数字に見えてきます。あの数分に何が詰まっていたのか、順番にたどります。

13分、19分、28分、45+2分――前半だけで2-2

前半だけで、試合の向きは二度も大きく変わりました。シティが先に動かし、リヴァプールがひっくり返し、最後はシティが追いつく。得点の間隔が短く、ひと息つく前に景色が変わっていく45分でした。

最初のゴールは13分です。左からカルロッタ・ヴァムザーが折り返し、ローレン・ヘンプがゴール右下へ決めてシティが先制しました。ただ、リヴァプールの返事は早く、その6分後。前方へ送られたボールをヴィヴィアン・エンダーマンがつなぎ、アリス・ベルグストロムが落ち着いて1-1としました。

さらに28分、ベルグストロムが右から入れたボールがゴール前にこぼれ、エンダーマンが山下杏也加の守るゴールを破ります。これでリヴァプールが2-1と逆転。13分の先制から、わずか15分でリードする側が入れ替わり、前半の緊張感がぐっと高まりました。

山下が守るシティは19分に追いつかれ、28分には逆転を許しました。失点しても、試合が再開すればすぐに次の場面が来ます。短い間に同点、逆転と状況が変わるなか、山下がゴール前に立ち続ける姿には、見ている私のほうが息を詰めました。

そして前半終了間際の45+2分、ヘンプのシュートをGKキアラ・キーティングが止めたものの、ボールは手元に残りませんでした。そこへカディジャ・ショーが詰め、シティが2-2。先制されてもすぐ追いつき、さらに逆転したリヴァプールには驚かされましたし、前半のうちに追いついたシティからも、この試合を簡単には渡さない粘りを感じました。こうして振り出しに戻ったことが、後半の長い均衡につながっていきます。

別々の場所で中盤を支えた長谷川唯と長野風花

俯瞰した抽象的なピッチで、青い選手のパスの軌跡と赤い選手のボール回収を表す流れが広がるイラスト パスを味方へ広げる動きと、ボールを回収して整える動きを対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。

長谷川唯と長野風花は、どちらも得点者ではありません。それでも、2人はパスをつなぎ、得点とは違う種類の見せ場を90分の中に残していました。

長谷川と長野はそろって先発し、交代せずに試合終了まで出場しました。シティではGK山下杏也加もフル出場し、日本人3選手が最後までピッチに立ち続けました。

Sofascoreの集計によると、長野は56本中53本のパスを成功させ、相手が持っていたボールやこぼれ球を自分たちのものにする「ボール回収」を11回記録しています。長谷川については、同じページに数字と評価が次のように記されています。

Yui Hasegawa knitted the game together, completing 54 of 58 passes, creating a big chance and hitting the woodwork. (訳)長谷川唯は58本中54本のパスを通し、決定機を一つ作り、枠にも当てながら試合をつないだ。

— Sofascore(2026年9月18日)

「試合をつないだ」という評価には、私もうなずきました。ただ、決定機を作り、枠にも当てたことを考えると、長谷川は味方へ落ち着いて渡すだけではなく、ゴールへ近づく怖さも見せていたと思います。

長野について心に残るのは、高い割合でパスを通したことに加え、11回ボールを回収していた点です。2人を同じ数字で比べるより、役割の違いのほうが鮮明でした。長野はボールを取り戻して味方へつなぎ、長谷川はパスをつなぎながらゴールへ近づく。得点表に名前がなくても、試合を支える方法は一つではないと感じました。

オウンゴールからヘンプの一撃へ――決着の数分間

後半に長く続いた2-2の均衡は、90分からの数分間で一気に崩れました。きっかけは、ゴール前へ送られた一本のクロス。そして、その直後にローレン・ヘンプが走り抜けた場面でした。

90分、途中から入ったグレース・クリントンがリヴァプールのゴール前へクロスを送ります。そこへグレース・フィスクが足を伸ばすと、ボールは自分たちのゴールに入ってしまいました。シティが3-2と勝ち越すオウンゴールです。

フィスクは、近くにいたカディジャ・ショーに合わせられるのを防ごうとして足を伸ばしたように見えました。何もしなければ相手に届くかもしれない。でも、触れれば自陣のゴールへ向かうかもしれない。その一歩が失点に変わった瞬間には、守る側の残酷さを感じて胸が詰まりました。フィスク一人を責める気持ちにはなれません。

マンチェスター・シティの公式記事によると、リヴァプールは同点を求めて多くの選手を前へ送り、その背後をヘンプが進み、90+5分にこの試合で2点目となるゴールを決めています。相手が前へ出た直後、空いた場所を使って素早く攻める「カウンター」で、スコアは4-2になりました。

追いつくために前へ出た分、ヘンプが走る空間が生まれたように見えました。得点を求めた選択が、反対に点差を広げる結果へつながってしまう。90分まで保たれていた均衡が二つの場面で崩れたところに、終盤の難しさと、シティが機会を逃さなかった強さの両方を感じました。

悔しさの中にも残った、次へつながる手応え

この試合には、あと少しだったというリヴァプールの悔しさと、それでも自分たちの戦い方には残せるものがあったという手応えの両方がありました。長谷川唯、長野風花、山下杏也加の90分も、その喜びと悔しさの両側にありました。

試合後、リヴァプールのガレス・テイラー監督は、まず率直な悔しさを口にしました。

Disappointing but ultimately, we’ve just come up a bit shy. (訳)残念です。最終的には、あと少し届きませんでした。

— ガレス・テイラー監督、リヴァプールFC(2026年9月18日)

この言葉を抜きにして、前向きな部分だけを受け取るべきではないと思います。90分まで2-2で、勝点1が見えていたからこそ、「あと少し」には数字以上の重さがあります。最後の数分で2点を失った悔しさは、簡単に明るい話へ置き換えられるものではありません。

その一方で、テイラー監督は続けて、こうも話しています。

Playing that way, we believe we’ll win a lot of games this season. (訳)あのように戦えれば、今季は多くの試合に勝てると私たちは信じています。

— ガレス・テイラー監督、リヴァプールFC(2026年9月18日)

敗戦のすぐあとに、この言葉が出たことには少し救われました。4-2という結果を明るく言い換えたのではなく、悔しさを抱えながらも、この日の戦い方には次へ残せるものがあった。その手応えが、言葉から伝わってきました。

長谷川が味方へ通した54本のパス、山下が6得点の試合で守り続けた90分、長野の11回のボール回収。私の中に最後まで残ったのは、長野の11回です。得点が次々と動く試合で、ボールを11回も自分たちのものにした。その積み重ねがあったから、4-2の夜は最後の数分だけの物語ではありませんでした。

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