谷川萌々子、センターサークル付近からの一撃――長谷川唯と向き合った9月
9月6日のフライブルク戦で、谷川萌々子は遠い位置からの先制点と終了間際の追加点を記録。女子CLのマンチェスター・シティ戦では、長谷川唯ら日本人4選手が先発しました。クラブで敵同士になった二人の90分と、10月のなでしこジャパン欧州遠征へつながる楽しみを追います。
自陣寄りから放たれたボールが、前に出ていたGKを越えてゴールへ飛び込む。その16日後、谷川萌々子は女子チャンピオンズリーグ(女子CL)で長谷川唯と敵同士になりました。一つの鮮やかな判断と、同じ中盤で向き合った90分は、二人の9月をどう映していたのでしょうか。
9月6日のフライブルク戦で、谷川は18分と90+1分に得点し、バイエルンは4-1で勝利。9月22日のマンチェスター・シティ戦では、谷川、長谷川、山下杏也加、藤野あおばの日本人四選手が先発し、試合は2-2で終了しました。
私は、谷川のゴールに表れた判断と走り、そしてクラブでは敵になった二人の姿を振り返りながら、10月の代表戦で見たい関わり方を考えてみます。
9月22日、女子CLで同じピッチにいた四人
この試合でいちばん心に残ったのは、別々のクラブで戦う日本人四選手が一つの試合に居合わせ、谷川と長谷川が敵同士として中央で向き合ったことでした。四人が同じ画面に収まる光景に、私は素直に胸が高鳴りました。
大会最初の段階にあたるリーグフェーズの第1節で、バイエルンはマンチェスター・シティと対戦しました。バイエルンが前半に2点を先行し、シティが追いついて2-2。谷川はバイエルンの中盤で、長谷川はシティの中盤で先発し、二人とも交代せずに試合終了までプレーしました。シティでは山下がゴールを守り、藤野も先発しています。
四人がそろったこともうれしかったのですが、特に心に残ったのは、谷川と長谷川が違う色のユニフォームで向き合っていたことです。代表では同じ側に立つ二人が、欧州のクラブ大会では互いの前進を止めようとする。所属クラブで過ごす時間が、それぞれに別の経験を積ませているのだと感じる夜でした。
谷川萌々子、遠さを消した18分と走り切った90+1分
谷川の二得点には、遠くから試合を動かす大胆さと、最後までゴール前へ走る力の両方が表れていました。鮮やかな先制点だけでは、この日の谷川を語り切れないと私は感じます。
21歳になった谷川は、9月6日のフライブルク戦に先発しました。18分、相手GKアンナ・ライマンがゴールから離れているのを見て、ハーフウェーラインのわずかに自陣側からシュート。ボールはGKを越え、そのまま先制点になりました。
まず驚くのは、やっぱりゴールまでの距離です。でも、見返すほど胸が躍ったのは、遠くから打てる力だけではありません。GKとゴールの位置を捉え、「今なら狙える」と判断したように見える、その速さでした。自陣寄りからでもゴールを選べる視野が、一瞬で試合を動かしました。
そして90+1分。相手の攻撃が終わると、バイエルンは守りから攻めへ素早く切り替えます。谷川はクララ・ビュールの横パスを受け、約16メートルの位置からチームの4点目を決めました。90分を過ぎても前へ走り、味方から受けたボールを得点につなげる。派手な先制点のあとにも足を止めなかった姿に、ひらめきだけではない頼もしさを感じました。
Ihr Spielstil ist besonders: Sie hat eine unglaublich feine Technik am Ball und sieht Dinge, die nicht jeder auf dem Platz sieht. (訳)彼女のプレースタイルは特別です。ボールを扱う技術が非常に繊細で、ピッチ上で誰にでも見えるわけではないものを見ています。
— ビアンカ・レヒ(FCバイエルン女子部門ディレクター)、kicker(2025年11月25日)
この「見えている」という言葉を読んで、私は先制点の前にGKの位置を捉えた場面を思い出しました。一つのゴールだけで谷川への評価をすべて説明できるわけではありません。それでも、距離を縮めてしまうような18分の判断と、ビュールのパスに応えた90+1分の走り。その両方が同じ試合にあったから、谷川の魅力が少し立体的に見えました。
次は同じユニフォームで――ハイチ戦とドイツ戦へ
別々のクラブから同じ代表のユニフォームへ集まる四人を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
9月22日にクラブ同士で向き合った四人が、今度はなでしこジャパンへ集まります。次に見たいのは、谷川と長谷川の長所が同じチームの中でどう組み合わされるかです。
10月の欧州遠征には、二人に加えて、マンチェスター・シティの山下と藤野も選出されました。初戦は現地時間10月9日、フランスのサン=トゥアンにあるスタッド・バウアー(Stade Bauer)で行われるハイチ女子代表戦です。続いて10月13日には、ドイツ・ブレーメンのヴェーザーシュタディオン(Weserstadion)でドイツ女子代表と対戦します。日本時間では、それぞれ10月10日と14日になります。
狩野倫久監督は、メンバー発表に合わせたJFA公式のコメントで、二試合では「まずは勝つことをベースに置きつつ」、異なる相手に攻守両面でどう戦うかという戦術の幅を広げることがテーマになると話しました。相手に応じて、攻め方と守り方の選択肢を増やしていく遠征です。
もし二人が同時に出場するなら、谷川がゴール前へ出ていくときに長谷川がどう関わるのか。縦に並ぶのか、立つ位置を入れ替えるのか。別々の時間に起用されるなら、それぞれが試合へどんな変化を加えるのか。見たい組み合わせはいくつもあります。
フライブルク戦では谷川の判断と走りが光り、女子CLでは長谷川と対戦相手として90分を過ごしました。次は同じ側に立つかもしれない二人を、10月の二試合で見届けること。それが今の私のいちばんの楽しみです。