2点差が消えた夜、谷川萌々子と長谷川唯は中盤にいた――バイエルン対マンC 2-2雑感
UWCL開幕節、バイエルン対マンチェスター・シティ。谷川萌々子、長谷川唯、藤野あおば、山下杏也加がそろってフル出場した90分は、11分の先制、62分のPKストップ、86分の一撃と揺れ続けました。試合の重心がどこで動いたのかを、両チームの言葉も交えて振り返ります。
9月22日、スポルトパルク・ウンターハヒンクで行われたUEFA女子チャンピオンズリーグのリーグフェーズ第1節。バイエルンとマンチェスター・シティの初戦は、2点を先に奪ったホーム側にシティが追いつき、2-2で終わりました。
同じスコアを持ち帰っても、バイエルンには「逃した」、シティには「戻した」という感触が残りそうな90分。その真ん中に谷川萌々子と長谷川唯がいて、藤野あおばと山下杏也加も含めた日本人4人が最後までピッチに立っていたことが、私はやっぱりうれしかったです。
11分と28分、バイエルンが握った前半
11分、リンダ・ダルマンのパスに抜け出したジュリア・グウィンが、ペナルティーエリア中央から右足でゴール左隅へ流し込みました。28分にはペルニレ・ハルダーのクロスをケルスティン・カスパライがクリアしきれず、オウンゴール。立ち上がりのバイエルンは寄せる一歩目がそろい、シティに考える時間を与えていないように見えました。
谷川はベルナデッテ・アマニと組むバイエルンの中盤、長谷川はサマンサ・コフィーと並ぶシティの中盤で先発しました。ただ、ふたりだけが向き合う試合というより、周囲との距離を整えるふたりが、それぞれ違う圧力の中で出口を探す試合だったと感じます。45分にベス・ミードが1点を返したことで、前半の印象がそのまま結末になるとは思えなくなりました。
“That was one of the best halves since I’ve been here.” (訳)「私がここに来て以来、最高の前半の一つでした」
— José Barcala(バイエルン監督)、FC Bayern(2026年9月23日)
バルカラ監督のこの評価には、素直にうなずきました。華やかな2得点だけでなく、相手の最初のパスを落ち着かせなかったことが、あの前半の色をつくっていたと思います。それでも終了間際に1点を返されたところに、試合の空気は少しだけ変わり始めていました。
62分のPK、86分まで消えなかった糸
前半から後半へ主導権が移る感覚を二つの色の流れで表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
後半はシティが前へ出る時間を増やしました。62分、藤野がエナ・マフムトヴィッチに倒されてPKを獲得。カディジャ・ショーのキックはマフムトヴィッチに止められます。追いつく大きな機会を逃した場面なのに、藤野が背後へ入り込めるようになったこと自体が、前半とは違う景色に見えました。
86分、ローラ・ブラインドキルデ・ブラウンのパスを受けたカルロッタ・ヴァムザーが、エリア中央から右足で同点弾。PKを止めたバイエルンと、止められても攻める回数を重ねたシティ。その両方の粘りが、2-2という数字に重なった気がします。
“We showed that in the second half here, now we need to do it for 90 minutes.” (訳)「ここでは後半にそれを示せました。今度は90分間やらなくてはいけません」
— Beth Mead(マンチェスター・シティ)、Manchester City(2026年9月23日)
ミードの言葉には、追いついた喜びだけで終わらせない厳しさを感じます。シティの後半は頼もしかったけれど、前半の苦しさまで消えたわけではない。バイエルンの前半も鮮烈だったけれど、最後まで同じ強度を保てたわけではない。両チームが持ち帰る宿題まで、きれいに表裏になった一戦でした。
「日本人対決」だけでは閉じられない90分
谷川、長谷川、藤野、山下はそろって先発し、交代せずに試合終了を迎えました。中盤でボールの行き先を探すふたり、サイドと背後へ何度も走った藤野、最後尾から試合を見ていた山下。同じ日本人選手でも、背負っていた役割はこんなに違います。
だから私は、谷川対長谷川という見出しだけで、この夜を小さくまとめたくありません。日本人4人が欧州の開幕節で別々の仕事を担い、2点差が消える試合の流れの中にずっといた。その事実が、いちばんじわじわと心に残りました。