上田綺世、79分の左足弾。ジルーとの共存に見えた可能性――ニース対リール2-1雑感
敵地アリアンツ・リヴィエラで2点を追ったリール。上田綺世の一撃で1点差に迫った終盤、ゴール以上に目を奪われたのは直後の場面でした。オリヴィエ・ジルー投入で変わった前線の距離感、監督が口にした「補い合える」という言葉、加入後4試合3得点という数字から考えます。
負けた試合なのに、79分から何度も見返したくなりました。上田綺世の左足が、少し重たかったリールの夜を一気にざわつかせたからです。
現地時間2026年9月20日、リーグ・アン第5節のニース対リールは2-1。アリアンツ・リヴィエラで、リールは22分のオウンゴールと67分のモハメド・アムーラの得点で2点を追う展開になりました。前半からニースに危ない場面を作られ、反撃が形になり始めたのは後半。結果だけでなく、その遅さにも悔しさが残る試合でした。
79分、迷いのない左足
上田はセンターフォワードで先発し、最後までプレーしました。47分にはチアゴ・サントスのクロスへ頭で合わせたものの、GKイェヴァン・ディウフがセーブ。64分にはオリヴィエ・ジルー、マウリッツ・ケアゴー、オサメ・サーラウィが入り、前線の組み合わせが変わります。
そして79分。ケアゴーのパスで抜け出した上田が、左足のハーフボレーを叩き込みました。準備の歩幅が小さく、振りは鋭い。考える時間を与えられたというより、ボールが来た瞬間にはもう打つ形ができていたように見えました。
さらに82分、上田のヘディングをディウフが止めます。得点の直後にもう一度ゴールへ迫った、その切り替えの早さが私は好きでした。1点を喜んで終わるのではなく、同点まで手を伸ばそうとする空気が画面越しにも伝わってきたんです。
His goal was clinically taken and only a fantastic Diouf save denied him a brace and Lille a point. (訳)得点は冷静に仕留めたもので、ディウフの見事なセーブがなければ、上田の2点目とリールの勝ち点が生まれていた。
— Get French Football News(2026年9月20日)
「冷静に仕留めた」という評価には素直にうなずきました。ただ、この夜の上田を表すなら、私は直後のヘディングまで含めたいです。一本のシュートだけではなく、次の一本を探し続けたところに、ストライカーらしいしつこさを感じました。
ジルーと並んで見えた、もう一つの入口
異なる持ち味の2人が同じゴールへ向かう関係性を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
ジルーが入ってからの並びは、とても気になるものでした。高さと強さのあるジルーが中央で相手を引き受け、その周りで上田が動く。私には、同じセンターフォワードでも異なる歩幅を持つ2人が、互いの通り道を作ろうとしているように見えました。
ダヴィデ・アンチェロッティ監督も試合後、2人の関係についてこう話しています。
« Ce sont deux joueurs complémentaires. Dans des matchs comme ça, lorsqu’on cherche à revenir au score, leur duo est intéressant. » (訳)「2人は互いを補い合える選手です。このように追いつこうとする試合では、このコンビは興味深い選択肢になります」
— ダヴィデ・アンチェロッティ監督、LOSC公式(2026年9月20日)
「補い合える」という言葉には、すごく納得しました。一方で、監督は同じコメントの中で、2人を並べた時間帯はチャンスが生まれたものの、ボールを失う場面が増え、もっと試合をコントロールする必要があるとも振り返っています。
だから、この約30分だけで完成した形とは言いたくありません。追いかける場面で使うのか、最初から並べられるのか。守備や中盤とのつながりをどう整えるのか。面白さと宿題が同時に見えたからこそ、次に試すときが楽しみになりました。
公式戦4試合3得点を、答えにしすぎない
上田はリール加入後、公式戦4試合で3得点。リーグ戦では3試合2得点、チャンピオンズリーグでもレアル・ベティス戦で1点を記録しています。新しい国と新しいチームで、早い段階からゴールという形を残しているのは頼もしいです。
でも、4試合はまだ入口でもあります。ゴール数だけを眺めて、ジルーとの並び方まで答えが出たことにしてしまうのは早い気がします。ニース戦で私がいちばん惹かれたのは、数字の派手さより、前線の形が変わっても上田がゴール前へ入り続けたことでした。
次は日本代表で、何がつながるだろう
上田は日本代表に選ばれており、9月24日には宮城でウルグアイ代表戦が予定されています。クラブでの役割と代表での役割は同じではありませんし、ニース戦の一撃が次の試合を決める材料になるわけでもありません。
それでも、左足で仕留め、すぐ次の決定機へ入っていった感覚を持って代表へ向かえるのは興味深いです。ゴールだけを待つのではなく、どんな立ち位置から最初の一本へたどり着くのか。そこを楽しみに見たいと思います。
ニースで残ったのは、敗戦の苦さと、79分から急に開いた別の景色でした。上田とジルーの組み合わせも、その景色の一部。まだ輪郭がぼんやりしているからこそ、続きを見届けたくなります。