運営者の雑感

上田綺世、49分と90+6分――日本代表対ベネズエラ2-1雑感

先発でA代表デビューした4人に加え、谷村海那も81分から初出場。開始8分の負傷交代、後半の5人交代、終盤に10人となった日本、いったん相手側に示されたPKがVARで反転した結末。新しい顔ぶれの緊張と、追いついた直後の安堵が重なる雨の広島の一夜でした。

雨の夜のスタジアムで、青いユニフォームの選手がPKを蹴る後ろ姿を描いたイラスト
イラスト: OpenAI

46分、ベネズエラのケビン・ケルシーに先制された瞬間、胸の奥がすっと冷えました。ところが49分、上田綺世が同点ゴール。さらに90+6分、上田がPKを決めて日本代表が2-1で勝利しました。時計を見るたびに感情が入れ替わる、落ち着く暇のない後半でした。

日本代表とベネズエラの一戦が行われたのは、2026年9月28日のエディオンピースウイング広島。気温24.8度の雨のなか、27,882人が見守りました。試合が終わったとき、うれしさの横には前半の緊張や最後の判定への戸惑いも残っていました。まずは、新しい顔が並んだ前半から振り返ります。

先発10人変更、先発4人がA代表デビュー

FOOTBALL ZONEが伝えた前日会見で、森保一監督は「大幅変更でいきたい」と話しました。その言葉は、先発10人の入れ替えになって表れます。ウルグアイ戦から続けて先発したのは瀬古歩夢だけ。先発では4人が、年齢制限のないA代表の試合に初めて出場しました。

その4人は、GKの小久保玲央ブライアン、中野就斗、熊坂光希、齋藤俊輔です。「大幅変更」という言葉が、ピッチに並ぶ選手の顔として一気に現れました。これだけ顔ぶれの変わった日本がどんな45分を見せるのか。楽しみなのに、見ている私まで少し緊張しました。

地元サンフレッチェ広島の中野は先発し、71分に堂安律と交代。小久保は前半を無失点で終え、ハーフタイムに鈴木彩艶へゴールを任せました。

一方、熊坂のデビュー戦は開始8分で止まりました。サッカーキングは、熊坂が左脚を押さえて座り込み、担架でピッチを離れたと報じています。田中聡との交代は負傷によるものでしたが、この時点でけがの程度までは分かりません。待っていた舞台があまりに短く終わり、胸が詰まりました。

前半終了の笛が鳴ったとき、私の目は0-0という数字より、開始8分の交代を抱えながら45分を渡し切った選手たちへ向いていました。静かだった前半にも、ちゃんと重さがありました。

46分の失点から、49分の上田綺世まで

ハーフタイムに5人を替えた日本は、後半開始直後に先制を許しました。それでも3分後には1-1。交代、失点、同点が続けて押し寄せました。

前半から下がったのは、小久保玲央ブライアン、鎌田大地、齋藤俊輔、後藤啓介、佐藤龍之介。代わって鈴木彩艶、田中碧、伊東純也、上田綺世、久保建英が入りました。名前を追うだけでも忙しく、「後半はどうなるの?」と画面から目が離せませんでした。

ところが46分、先にスコアを動かしたのはベネズエラです。ケルシーが左足で決め、日本は0-1。新しい顔ぶれで後半へ入った直後だっただけに、前半からつないできたものが急にほどけるようで、胸がざわつきました。

その3分後、伊東がゴール前へ送ったクロスに上田が右足で反応します。ボールに一度だけ触るシュートで1-1。伊東は迷わず届け、上田も余計な動きを挟まずに仕留めました。短く、くっきりした一連のプレーでした。

私はそこでようやく息を吐けました。失点で傾いた試合を、伊東のクロスと上田の一振りがもう一度まっすぐに戻した。1-1から、後半は改めて動き始めます。

久保建英と伊東純也が動かした後半の幅

久保建英と伊東純也が加わった後半、日本の攻撃は横に大きくなったように映りました。久保が中央に近い場所へ入り、伊東が外側に立つ。二人の距離が、ベネズエラの守備を動かしているようでした。

ベネズエラの主将ジョン・アランブルは先発し、ベンチスタートだった久保はハーフタイムから出場しました。二人は後半、同じピッチに立っています。久保とアランブルは、2026/27シーズンにレアル・ソシエダで一緒にプレーする選手です。

「クラブの同僚同士が代表戦で対面する」という見方もできます。ただ、私の目を引いたのは一対一の勝負より、久保と伊東が同時に入ったことで生まれた広がりでした。海外のスポーツ情報サイトSofascoreは、後半の変化をこう表しています。

Kubo e Ito estiraron el 3-4-1-2 de Venezuela y abrieron pasillos hacia el área. (訳)久保と伊東はベネズエラの3-4-1-2を横へ広げ、ペナルティーエリアへ通じる道を開いた。

— Sofascore(2026年9月28日)

3-4-1-2は、選手の並び方を示す数字です。この分析にはうなずけます。久保が中央寄りでボールを受けようとすると、相手の意識も内側へ寄るように見えました。その外側では、伊東が前へ出られる場所を探していました。

中央の久保と外側の伊東。その二人が同時に画面へ入る形が、私にはいちばん印象的でした。日本がゴールへ近づく道は、縦だけでなく横にも広がっていました。

90+6分、ベネズエラのPK判定が日本のPKへ変わった

日本の決勝点は、最初から日本に与えられたPKではありません。判定が変わった瞬間、うれしいより先に「いま何が起きたの?」と戸惑いました。

その前に、日本は難しい状況へ追い込まれていました。81分に谷村海那が田中聡との交代で入り、その直後に渡辺剛がプレーを続けられなくなります。すでに交代の機会を使い切っていたため、日本は終盤を10人で戦いました。

VARは、映像を使って主審の判定を助ける仕組みです。主審はまずベネズエラにPKを与えました。しかし映像を確認すると、それより前のプレーでヤンヘル・エレラが久保に反則をしていたとして、ベネズエラのPKは取り消され、日本にPKが与えられました。反則を取られたのは、久保と同じレアル・ソシエダのアランブルではなくエレラです。

日本から見れば、久保が倒された場面までさかのぼって確認された判定です。一方のベネズエラは、自分たちに示されたPKが消え、逆に相手のPKへ変わりました。受け止めるのが難しい判定だったのでは、と思います。私自身も、喜ぶまでに少し時間がかかりました。

その重い場面でボールを任された上田は、90+6分にPKを決めました。49分の同点ゴールに続く、この日2点目。10人で耐えていた日本が2-1と前へ出ました。

開始直後の失点、3分後の同点、渡辺が抜けたあとの10人、そして方向まで変わったPK判定。すべてが重なった先で、上田はボールをゴールへ沈めました。試合終了の笛が鳴るまで、胸の鼓動は速いままでした。

初キャップの緊張も、90+6分の歓声も次の材料に

雨上がりのロッカールームに並ぶ青いユニフォームと、次のピッチへ続く扉を描いたイラスト 初めて代表の試合を経験した選手たちが増え、その経験が次へつながる様子を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。

この夜の前向きな着地点は、前半と後半で違う顔ぶれが一つの試合をつないだことにあります。経験の浅い選手たちが前半を受け持ち、後半から入った選手たちがその続きを担いました。

先発でデビューした4人に加え、81分から入った谷村海那も初めてA代表のピッチに立ちました。この夜のデビューは合わせて5人。熊坂の時間は負傷によって短くなりましたが、新たな5人の名前が代表戦の記録に加わりました。

私には、前半は一つ一つのプレーを待つ静かな45分、後半は出来事を追うだけで精いっぱいの45分に映りました。同じ試合なのに、手ざわりがまるで違う。その落差も含めて、5人にとって最初の代表戦になりました。

日本は10月1日、横浜国際総合競技場でエクアドルとキリンカップサッカー2026を戦います。今回とはまた違う選手の組み合わせが見られるかもしれません。

8分には心配し、46分には落ち込み、49分にはほっとして、90+6分には戸惑いながら声が出ました。感情が忙しい夜だったなあ、と今なら少し笑えます。次は誰と誰が同じピッチに立ち、どんな時間をつないでいくのか。もう、その続きが楽しみです。

関連ページ

はてなブックマークに追加