0-0の決勝と、65分・69分の記憶――U-20女子W杯スペイン優勝からヤングなでしこを振り返る
スペインが北朝鮮とのPK戦を4-3で制し、2大会ぶりのU-20女子W杯王者に。大会7試合を無失点で終えた相手に、日本はどこまで踏みとどまり、どこで出口を失ったのか。決勝で光ったGKからの組み立ては、ヤングなでしこの敗退を見直すどんな手がかりになるのでしょうか。
ライア・ロペスが北朝鮮最後のキッカー、パク・イルシムのPKを止めた。「止めた」と息をのんだ次の瞬間、私の頭に浮かんだのは、10日前の65分と69分だった。
2026年9月27日、ポーランド・ウッチのStadion Miejski ŁKS Łódź。スペインと北朝鮮の決勝は、延長を含む120分を戦っても0-0のまま、スペインがPK戦を4-3で制した。ロペスにとって、決着をつけたセーブはこのPK戦で二つ目だった。
同じピッチで日本は北朝鮮に0-2で敗れ、65分と69分にゴールを許している。スペインのお祝いの輪を見ていたのに、胸へ戻ってきたのは日本が耐えた時間と、そこから続けて失点した悔しさだった。
2大会ぶりのスペインと、7試合無失点の北朝鮮
決勝で向き合ったのは、再び世界の頂点に立とうとするスペインと、大会の全試合を無失点で終えた北朝鮮だった。片方の優勝だけでなく、もう片方が残した記録まで心に残る決勝だった。
スペインの優勝は2022年大会以来で、2大会ぶり2度目。一方の北朝鮮は、グループステージから決勝まで7試合をすべて無失点で終えた。FIFAによると、大会の最初から最後まで1点も与えなかったチームは、U-20女子ワールドカップで北朝鮮が初めてだった。
7試合続けて「0」。あらためて並べると、やっぱり驚く。決勝でも、スペインがゴールへ近づくたびに北朝鮮は最後のところで立ちはだかり、簡単には終わらせてくれなかった。この事実を知ると、日本の0-2も、ただ「負けた」の一言では閉じられない。
日本戦の均衡をほどいた65分と69分
日本対北朝鮮は、始まってすぐに勝負が傾いた試合ではなかった。前半は0-0。それでも後半、65分と69分に続けてゴールを許し、わずか4分の間に0-2という結果の形が決まった。
試合が行われたのは、現地時間9月17日18時30分、日本時間では18日1時30分。場所は決勝と同じ、ウッチのStadion Miejski ŁKS Łódźだった。日本は前半を無失点で終えたものの、65分に先制された。チェ・チョングムのクロスがポストに当たり、最後は古田麻子に触れてゴールへ入ったオウンゴールだった。
「ああ、ここで入ってしまうのか」と、胸が詰まった。この場面だけを古田ひとりの責任にはできない。その前から日本は自陣で押され、ボールを前へ運びにくくなっていた。そして気持ちを整える間もない69分、チェ・ヨナに右足で追加点を決められた。
FIFAはジョン・イルチョンを、この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選んだ。その試合でいちばん高く評価された選手に贈られる賞だ。
And this latest meeting between the Asian rivals, in Lodz, was also a tightly fought contest, until Jon raised her game in the second half, at which point the tide began to turn in her side's favour. (訳)ウッチでのアジアのライバル同士の再戦も接戦だったが、ジョンが後半にプレーの水準を上げると、流れは北朝鮮側へ傾き始めた。
— FIFA(2026年9月17日)
この「後半から流れが傾いた」という見方は、私が試合で受けた印象と重なった。ジョンがボールに触れるたび、北朝鮮の攻撃が一段速くなったように見えた。前半を0-0で終えたことは、日本が持ちこたえられていた証しでもある。ただ、失点せずに踏ん張ることと、自分たちから試合を動かすことの間には距離があった。均衡が崩れたあとの4分間に、この0-2の苦しさが詰まっていた。
私が見落としかけた、圧力からの出口
相手の圧力と、GKを含む複数の逃げ道を対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
私は最初、日本が押し込まれた理由を、身体の強さの差だけで受け止めそうになった。でも決勝まで見ると、それだけでは足りないと感じた。相手に近づかれたあと、どれだけ早く次へつなげるか。GKも使いながら、ボールの逃がし先をいくつ作れるか。そこにも違いがあった。
決勝で目を奪われたのが、スペインのGKライア・ロペスだった。PK戦で2本を止め、大会のゴールデングローブ、最も優れたGKに贈られる賞を受けた。ただ、印象に残ったのはセーブだけではない。
ロペスは最後尾で守りながら、味方が前へ進むための出発点にもなっていた。ビルドアップとは、GKや守備の選手からパスをつなぎ、攻撃を始めること。私が見た決勝では、ロペスへ戻すことでボールの行き先が一つ増え、近くの味方も次の場所へ動けていた。
日本戦では、ボールを受けた選手のそばに助ける味方が少なく、ひとりで相手と向き合う場面があった。次のパス先を探している間に寄せられ、後ろへ戻しても、そのあとに別の選手が動いて新しい道を作れない。そんな小さな行き止まりが積み重なっていた。
相手に押されても倒れない身体は大切だ。ただ、日本の課題をそこだけに狭める必要はない。ボールを受ける向き、味方との距離、GKへ戻したあとの動き直し。小さな工夫を重ね、圧力を受けても逃げ道を一つずつ増やすことが、次の一歩になると思う。
ベスト16を、この世代の結論にはしない
日本の大会は、悔しいベスト16で終わった。それでも、1勝2分で進んだグループステージと、北朝鮮に先制されるまでの64分間を思うと、この一大会だけで世代全体を言い切ることはできない。
グループDでは、ニュージーランドに2-1で勝利。アメリカとは2-2、イタリアとは1-1で引き分けた。北朝鮮に0-2で敗れたラウンド16までを合わせると、今大会の成績は1勝2分1敗だった。勝ち切れなかった試合もある一方、三つの相手から勝点を重ね、グループを突破している。
北朝鮮とは4月にも対戦した。4月18日、タイのThammasat Stadiumで行われたAFC U20女子アジアカップ決勝では、日本が1-0で勝ち、56分に佐野杏花が決勝点を挙げた。ところが5か月後のワールドカップでは、日本が0-2で敗れた。この二つの結果は、両チームの力関係を一度で固定できないことも教えてくれる。
これから追いたいのは、WEリーグや大学・育成年代のリーグで迎える、それぞれの次の試合だ。佐野がもう一度ゴールへ向かう一歩と、GK岩崎有波へ戻したあとに周りの選手が動き直す形がどう変わるのか、今から楽しみにしている。