24得点0失点の先で、6-3の韓国と向き合う夜――なでしこジャパン、アジア大会準決勝展望
4試合24得点0失点で進んだなでしこジャパンと、準々決勝を6-3で制した韓国。神谷千菜、宝田沙織、塩越柚歩が作ってきた得点の入口は、追い上げを受けても突き放した相手にどう映るのか。フィリピン戦で止まった後半45分と、韓国が1点差から押し返した時間にも目を向ける。
前半4-0、後半0-0。フィリピン戦を見終えたあと、私の中に残ったのは、24得点の華やかさよりも、得点が止まった45分の静けさでした。今夜の韓国戦を考えるとき、あの後半を置き去りにはできない気がしています。
なでしこジャパンは、タイとベトナムにそれぞれ8-0、チャイニーズ・タイペイとフィリピンにそれぞれ4-0で勝ち、4試合24得点0失点で準決勝へ進みました。数字だけを見れば、心強さでいっぱいになります。
ただ、フィリピン戦は前半終了までに4点を奪ったあと、後半に追加点は生まれませんでした。攻撃の音がふっと小さくなったように感じた、あの45分。そこに今夜の日韓戦を見るヒントがあるのかもしれません。
フィリピン戦で起きたこと
フィリピン戦は、コーナーキックなどを入口に前半で4点を重ねる一方、後半は攻め切れない時間が続きました。前半と後半で表情がはっきり変わった準々決勝だったと思います。
最初のゴールは2分。塩越柚歩の左CK(コーナーキック)に瀬野有希が頭で合わせ、相手選手に阻まれたこぼれ球を宝田沙織が押し込みました。26分には、再び塩越のCKに上野真実が、ボールを止めずワンタッチで合わせて2点目。さらに36分に宝田、前半終了間際の45+2分には神谷千菜が決め、日本は4点を持って前半を終えました。そのうち3点は、セットプレーから生まれています。
後半の開始から、日本は一度に5人を交代しました。試合全体では22本のシュートを放ちましたが、後半に新たな得点は生まれませんでした。狩野倫久監督も試合後、パスと動き出すタイミングが合わなかったこと、何人かでつないで相手を崩し切れず、横からゴール前へ送るボールに攻撃が偏ったことを修正点として挙げています。
CK、頭で合わせた場面からのこぼれ球、そしてボールを止めずに合わせた一撃。前半のゴールが次々と決まったぶん、後半の時間は意外なほど長く感じられました。4-0は大切な勝利です。それでも監督の言葉からは、満足だけで終わらせない90分だったことが伝わってきます。
神谷千菜の4戦連発、宝田沙織の6得点
二人の言葉を重ねると、セットプレー(コーナーキックなど、止まったボールから始める攻撃)を得点の入口にできた手応えと、それ以外の場面でもっと相手を崩したいという思いが見えてきます。目を引く得点数の奥に、次へ向かう視線がありました。
神谷はタイ戦で代表初得点を挙げ、ベトナム戦では2得点。チャイニーズ・タイペイ戦、フィリピン戦でもゴールを決め、代表デビューから4試合続けて得点し、今大会は計5得点となりました。
宝田はタイ戦で途中から出場して3得点を記録。チャイニーズ・タイペイ戦で1点、フィリピン戦で2点を加え、大会通算6得点です。
それでも、二人は得点数だけを見てはいませんでした。宝田はフィリピン戦後、試合が動いている中で相手を崩すのが難しいときにも、セットプレーからチームが3点を取れたことを成果に挙げました。神谷もセットプレーを中心に得点できた点を認めながら、相手を崩すための考え方や技術を、さらに高めたいと話しています。
私は、連続得点への期待と同じくらい、二人が自分たちの攻撃を手放しでは喜んでいないところに頼もしさを感じました。ボールをつないで届かなければ、セットプレーがある。そこを相手が強く警戒すれば、別の選手が動ける場所も生まれるかもしれません。今夜は、得点者だけでは終わらない選択肢の多さにも注目します。
韓国の6-3は、3失点だけでは読めない
守備のほころびと、押し返されても前へ進む得点力を対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
韓国は、準々決勝で喫した3失点だけを見ていると読み違える相手です。守備が揺れた時間だけでなく、追い上げられてからもう一度突き放した強さまで見ておきたいと感じます。
韓国サッカー協会(KFA)の記録によると、韓国はミャンマーに5-0、バングラデシュに6-0で勝ち、北朝鮮とは1-1で引き分けました。グループステージ(1次リーグ)3試合の合計は12得点1失点です。準々決勝ではウズベキスタンに6-3で勝利し、ここまでの4試合を合わせた失点は計4点となりました。
ウズベキスタン戦では、韓国が4-1で前半を終えたあと、64分と65分に続けて失点しました。1点差まで迫られましたが、そこから2得点。試合の流れを相手に渡しかねない時間を耐えるだけでなく、自分たちの得点で点差を戻しています。
우즈베키스탄의 저항이 예상대로 만만치 않았지만 우리 여자축구대표팀은 중요한 고비를 잘 넘어서며 여섯 골을 퍼부었다. (訳)ウズベキスタンの抵抗は予想どおり手ごわかったが、韓国女子代表は重要な山場をうまく乗り越え、6ゴールを挙げた。
— オーマイニュース/オーマイスポーツ(2026年9月26日)
私はこの結果を見たとき、まず失点に目が向きました。でも、「重要な山場をうまく乗り越えた」という現地の見方にはうなずきます。追いつかれそうになったあと、もう一度点差を広げたところまで見なければ、韓国のしぶとさを取り落としてしまうからです。
両チームの失点数だけを並べて、今夜の試合の景色を決めるのは早いでしょう。韓国が前へ出たときの得点力を思うと、緊張感はさらに増します。
19時30分のエコパで、最初の一歩を見る
今夜、私が注目したいのは、得点の場面だけではありません。ボールを失った直後の一歩、はね返ったボール(セカンドボール)への反応、横から届くボール(クロス)に合わせて走り込むタイミング。そんな小さな動きに、日韓戦の緊張が表れそうです。
準決勝の日本対韓国は、2026年9月29日19時30分から、小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われます。両国は3月18日のAFC女子アジアカップ準決勝でも対戦し、日本が4-1で勝ちました。
でも、3月の結果を今夜の答えにはできません。今回の選手たちが、目の前の一つ一つの競り合いにどう反応するのか。韓国に押し返される時間が来たとき、日本が慌てずにボールをつなぎ直し、もう一度相手側へ進めるかが気になります。得点の多かったここまでを経て、選手同士が苦しい時間にどう支え合うのか。そこにも今夜の見どころがある気がします。
神谷千菜が出場して中央でボールを受けたなら、周りの選手が前へ出るタイミング。宝田沙織がこぼれ球を拾ったなら、そのあとの選択。塩越柚歩がセットプレーを蹴る場面があれば、ゴール前で誰がどこへ動くのか。出場や立つ位置を決めつけず、ピッチに立ったときに追う観戦ポイントです。
私が待っているのは、大きな得点数が増える瞬間だけではありません。小さな動きを仲間同士でつなぎ、決勝へ近づいていく姿。その一つ一つを、少し緊張しながら楽しみます。