運営者の雑感

神谷千菜、5戦連発で決勝へ――アジア大会準決勝・なでしこジャパン対韓国雑感

激しい雨のエコパで、韓国がボール保持率63%を記録した日韓戦。0-0の前半を越えたあと、試合はどこで日本へ傾き、得点後の守備はどう韓国の反撃を閉じたのか。26得点無失点でたどり着いた先には、前回決勝でも向き合った北朝鮮との一戦が待っています。

雨のスタジアムで、顔の見えない青いユニフォームの女子選手が中央でクロスに頭を合わせようと跳ぶイラスト
イラスト: OpenAI

大場朱羽が、チョン・ミンヨンのミドルシュートを防いだ。雨の静岡県・エコパスタジアムで、胸の奥がひやっとした後半の立ち上がり。でも、ほっと息をつく間もなく、今度は神谷千菜のヘディングがゴールへ。危ない、と思った時間が歓声に変わるまで、本当にあっという間でした。

2026年9月29日、アジア競技大会女子準決勝。なでしこジャパンは韓国に2-0で勝ち、決勝進出を決めました。前半は0-0。54分と63分に神谷が決めています。ここまでたくさんのゴールを重ねてきた大会でも、この夜は楽に点が入ったわけではありません。あの大きな振れ幅をたどりながら、神谷の2得点だけでは語り切れない日韓戦を振り返ります。

0-0の前半、楽には見えなかった

2-0という結果だけを見ると、日本が落ち着いて勝ち切った試合に思えるかもしれません。でも前半は、日本がチャンスを作りながら、韓国にも一気にゴールへ迫られる、気の抜けない45分でした。私はずっとハラハラしながら見ていました。

32分には、自分たちのゴールに近い場所でのミスをチェ・ユリに突かれ、ボールを奪われます。そのまま右足でシュートまで持ち込まれました。ボールはゴールの上へ外れたものの、奪われた場所が場所だっただけに、思わず息が止まりそうになりました。もし枠へ飛んでいたら――と考えると、0-0の数字が急に細く頼りなく見えた場面です。

一方で、日本にも先に試合を動かせそうな瞬間がありました。前半終了間際、桑原藍がサイドから仕掛け、その流れで神谷千菜が左足を振ります。シュートはポストへ。あとほんの少しだっただけに、「入っていてほしかった」と悔しさが残りました。

韓国のシュートが上へ外れ、日本のシュートはポストに阻まれる。どちらに最初の1点が入ってもおかしくない空気のまま、前半は0-0で終わりました。点を取れなかったもどかしさはありましたが、危ない場面を越えて折り返せたことには、正直ほっとしました。この緊張があったからこそ、後半の先制点はより大きく感じられたのだと思います。

54分の頭、63分の左足――神谷千菜が変えた9分間

神谷千菜が決めた2点は、同じ選手のゴールでも形がまったく違いました。1点目は上野真実のクロスに飛び込んだヘディング。2点目は自分で相手のパスを奪い、左足で仕留めた一撃です。この9分間に、神谷の持つ二つの強さがぎゅっと詰まっていました。

試合が動いたのは54分です。上野が送ったクロスに神谷が頭で合わせ、韓国のGKキム・ミンジョンが守るゴールを破りました。前半から待ち続けた先制点だっただけに、ボールがネットへ入った瞬間は、張りつめていたものが一気にほどけるようでした。

上野と神谷は、普段はサンフレッチェ広島レジーナで一緒にプレーしています。代表で二人がどんな狙いを合わせていたかまでは分かりません。それでも、クラブで見慣れた二つの名前が日韓戦の先制点でつながったことが、私は素直にうれしかったです。

そして63分、神谷は韓国が後ろから出そうとしたパスを奪います。そこから左足で放ったシュートはゴール右下へ。今度は味方から届くボールを待つのではなく、奪うところから得点までを自分でやり切りました。

クロスへ飛び込んだ頭と、ボールを奪って振り抜いた左足。1点目と2点目を並べると、神谷が一つの形だけで得点しているのではないことがよく分かります。好機が来たときにためらわずゴールへ向かう、その迷いの少なさが、接戦だった日韓戦を日本へ引き寄せたように感じました。

韓国が63%を保持しても、得点は許さなかった

この試合を神谷千菜の2得点だけで終わらせたくないな、と私は思います。韓国が試合全体の63%でボールを持った一方、日本は2点を先に奪ったあとも失点せず、2-0で試合を終えました。韓国メディアも、日本の守りを「安定していた」と見ています。

Yonhap News Agencyが伝えたボール保持率は、韓国63%、日本37%でした。保持率とは、どちらのチームがより長くボールを持っていたかを示す数字です。ボールを持つ時間の長さが、そのまま得点になるわけではありませんが、韓国が日本の守備へ圧力をかける時間は短くありませんでした。それでも、日本は最後までゴールを許しませんでした。

하지만 안정적인 수비 블록을 구축한 일본의 견고한 뒷문을 끝내 열지 못하고 경기를 마무리했다. (訳)しかし、安定した守備ブロックを築いた日本の堅い守りを最後まで破れないまま、試合を終えた。

— CBSノーカットニュース(2026年9月29日)

私も、特に「安定した守備ブロック」という見方にはうなずきました。守備ブロックとは、選手同士が離れすぎず、まとまりを保って守る形のことです。2点を取ったあとも、そのまとまりを崩さずに韓国の反撃を受け止めているように見えました。

その評価を考えるうえで忘れたくないのが、52分にチョン・ミンヨンのミドルシュートを大場朱羽が防いだ場面です。先に失点してもおかしくない時間を大場が止め、その直後に神谷の先制点が生まれました。得点だけでなく、一つのシュートを防いだことも、決勝進出へ向かう試合の流れを変えたように感じます。

代表デビューから5試合、7得点になった

顔の見えない女子選手の周囲から、高い弧や低い曲線など異なるボールの軌道が一つのゴールへ重なるイラスト 異なる得点の形が一つのゴールへ重なる様子を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。

神谷千菜は、代表デビューとなった初戦から韓国戦まで、出場した5試合すべてでゴールを決めました。韓国戦の2得点を加えて大会通算7得点。5試合で7得点という数字そのものにも驚きますが、それ以上に、いろいろな形でゴールへ結びつけているところが私はとても面白いと感じます。

最初の一歩は、タイ戦の30分に決めた代表初ゴールでした。続くベトナム戦では12分と52分に2得点。チャイニーズ・タイペイ戦では20分、フィリピン戦では前半終了間際の追加時間にあたる45+2分、そして韓国戦では54分と63分に決めています。初めて代表で戦う大会なのに、試合が変わっても得点が途切れませんでした。

JFAはフィリピン戦が終わった時点で、代表デビューから4試合連続での得点は日本女子代表史上初だと伝えています。そこから迎えた韓国戦でも、神谷はさらに2点を重ねました。記録を意識していたかどうかは分かりませんが、大事な準決勝でも普段どおりゴールへ向かっているように見えました。

得点の形をたどると、数字以上に興味が膨らみます。初戦は頭で合わせ、ベトナム戦ではゴールから少し離れた場所からのシュートと、浮いたボールを地面へ落ちる前に蹴るボレーで得点。チャイニーズ・タイペイ戦とフィリピン戦では再び頭で決め、韓国戦ではヘディングと左足を使いました。

これだけ得点が続くと、「エース」や「点取り屋」と呼びたくなります。でも今は、一つの呼び名で神谷を決めてしまうより、初めての代表大会で目の前に来た機会を、それぞれ違う形でゴールにしている姿を見ていたいです。この先どんな形で得点に関わっていくのか、じっくり追いかけたくなる5試合でした。

26得点無失点の先で、もう一度北朝鮮と向き合う

日本の次の相手は、準決勝で中国に2-0で勝った北朝鮮です。決勝は10月2日19時30分から、もう一度エコパスタジアムで行われます。日本にとっては、3大会連続の優勝がかかる一試合です。

日本はタイとベトナムにそれぞれ8-0、チャイニーズ・タイペイとフィリピンにそれぞれ4-0、韓国に2-0で勝ちました。5試合すべて無失点で、合計すると26得点0失点です。日本は2018年大会と2023年大会を制し、2023年大会の決勝でも北朝鮮と対戦して4-1で勝っています。

ただ、前回の結果は今回の答えではありません。ここまでの得点数も、次の試合で同じように点が入る理由にはならないと思います。だからこそ私は、26得点の華やかさ以上に、なかなか先制できなかった日韓戦を2-0で終えられたことを心強く感じています。苦しい時間があっても、そこから試合を動かし、最後まで守り切れた。その経験は、大きな数字とは別の形で残るはずです。

決勝でもう一度見たいのは、54分のように、上野真実のクロスへ神谷千菜がためらわず飛び込む場面です。誰か一人に得点を背負わせるのではなく、つないだボールの先に走り込む選手がいる。雨のエコパで生まれたあの形が、北朝鮮を前にもう一度見られるのか。10月2日の夜を待ちます。

関連ページ

はてなブックマークに追加