12得点0失点の先にある一発勝負――U-21日本代表対北朝鮮、アジア大会準々決勝プレビュー
3戦12発無失点で首位通過したU-21日本代表が、9月26日19時30分に豊田スタジアムで北朝鮮と向き合います。タイ戦の47分に決めた小杉啓太、主将・市原吏音ら欧州で戦う選手への評価、そして情報の少ない相手に問われる落ち着き。派手な数字の裏側が気になっています。
3試合で12得点、失点は0。これだけきれいな数字が並ぶと、準々決勝もその続きとして見たくなる。でも、私はそこでいったん深呼吸したい。9月26日19時30分、豊田スタジアムで待つのは、勝ち上がる側だけが次へ進む北朝鮮戦だ。
12得点0失点は「答え」ではなく、ここまでの記録
U-21日本代表は、ホンコン・チャイナに2-0、キルギスに7-0、タイに3-0で勝ち、グループAを首位で通過した。タイ戦では31分に中島洋太朗、47分に小杉啓太、48分に石井久継が得点。後半開始直後の2点は、試合の景色が一気に変わる怖さと爽快さを同時に感じる時間だった。
ただ、3連勝も無失点も、次の結果を先回りしてくれる数字ではない。私がむしろ心強く感じたのは、いろいろな顔ぶれが実戦の時間を分け合ってきたことだ。タイ戦でも石渡ネルソンは55分から、ンワディケ ウチェブライアン世雄は80分から出場した。誰が先発するかを想像するより、異なる組み合わせを実戦で重ねてきたチームが、一発勝負の揺れにどう反応するのかを見たい。
情報が少ない相手ほど、自分たちの基準へ
情報の少ない相手と、自分たちの基準を示す光のつながりを対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
JFAは北朝鮮について、国際舞台の経験と情報が少なく、タフさを警戒点に挙げている。相手はグループステージ第2節まで1分1敗。それでも最終節はイランに先制されてから4-1で逆転し、準々決勝へ来た。序盤の戦績だけでは輪郭を決められない相手だと思う。
土屋櫂大は試合前に、こんな言葉を残している。
「(相手は)気持ちが前面に出てくると思う。しっかり戦うところは戦って、その中で冷静さを忘れずに戦えればいい」
— 土屋櫂大(U-21日本代表)、JFA「プレビュー&ピックアッププレーヤー④」(2026年9月)
「戦う」と「冷静さ」を同じ文の中に置いたところに、すごくうなずいた。接触の強さを想像して身構えすぎても、きれいにいなそうとして受け身になっても、いつもの判断から離れてしまう。熱くなる瞬間があっても、次のプレーで戻れること。その戻り先をチームで共有できているかが、私はいちばん気になる。
市原吏音と小杉啓太、欧州から持ち込む輪郭
主将の市原吏音はタイ戦で先発し、65分までプレーした。加入時にAZのフットボールディレクター、マックス・ハイベルツは、市原をこう評していた。
“Rion is een rechtsbenige centrale verdediger, die op beide posities centraal achterin uit de voeten kan. Hij is comfortabel aan de bal, heeft snelheid en bezit inzichtelijk vermogen.” (訳)「吏音は右利きのセンターバックで、中央の両方のポジションをこなせます。ボールを持っても落ち着いていて、スピードがあり、状況を読む力も備えています」
— マックス・ハイベルツ(AZフットボールディレクター)、AZ(2026年1月31日)
私が北朝鮮戦で見たい市原の姿とも重なる評価だった。目立つ競り合いだけではなく、ボールを受ける前に周りを見て、チーム全体の温度を少し下げるような選択ができるか。主将の仕事は腕章の見える場所だけにあるわけではない、と感じる。
47分に得点した小杉については、フランクフルトのスポーツディレクター、ティモ・ハルドゥングが加入発表時にこう述べている。
“In Keita Kosugi, we’re signing a young left-back who not only has good technical ability on the ball but also covers a lot of ground and has a high work rate. He’s already demonstrated his qualities as a regular starter in the Swedish league and in European competition, and he has great potential for development.” (訳)「小杉啓太はボールを扱う技術に優れるだけでなく、広い範囲をカバーし、運動量も豊富な若い左サイドバックです。スウェーデンリーグと欧州大会で主力として資質を示しており、今後さらに伸びる可能性があります」
— ティモ・ハルドゥング(アイントラハト・フランクフルト スポーツディレクター)、Eintracht Frankfurt(2025年12月18日)
タイ戦のゴールに目を奪われたけれど、「広い範囲をカバーする」という部分を読むと、北朝鮮戦では得点の前後にある走りにも目を向けたくなる。派手な一撃をもう一度、ではなく、味方の選択肢を増やす数歩や、失った直後の戻り。そういう働きが試合の呼吸を整えてくれたらうれしい。
派手さより、戻れる場所を見たい
12得点の攻撃力も、3試合を無失点で終えた守備も、ここまで積み上げた大切な事実だ。でも準々決勝で私が見たいのは、その数字を誇示する姿ではない。思うように前進できない時間や、相手の反撃で空気が変わる時間に、選手同士が声を掛け、立ち位置を直し、もう一度ボールへ向かえるかだ。
豊田スタジアムで迎える一発勝負。知らない部分の多い相手だからこそ、自分たちが3試合で確かめてきた基準が頼りになる。少し怖くて、それ以上に楽しみ。9月26日の夜は、得点の瞬間だけでなく、チームが冷静さへ戻る瞬間を探しながら見届けたい。