3バックから4バックへ、次はブラジル――キリンカップ優勝後の日本代表で見たいもの
ウルグアイ戦の終盤2得点、エクアドル戦のPK決着、決勝のシュート20本対3本。異なる形で勝った秋の4試合を、上田綺世の4得点と初出場6人の足跡から振り返ります。中野就斗のクロスから生まれた先制点と32分の失点は何を映したのか。11月14日のブラジル再戦へ向けて整理します。
国立競技場でトロフィーを掲げた二日後、もう視線の先には11月14日のブラジル戦があります。うれしい余韻にもう少し浸っていたい気持ちと、「この4試合で日本代表は何を増やせたんだろう」という問いが、私の中で並んでいます。今回は決勝だけをもう一度振り返るのではなく、4試合を通して見えた変化と、次の活動へ残った問いを考えます。
日本は10月5日のキリンカップ決勝でニュージーランドに2-1で勝ち、PK戦で決着した試合を含め、9月と10月の国内4試合を4勝で終えました。次の舞台はシンガポール・ナショナルスタジアム。11月14日にブラジル、17日にパラグアイと対戦します。
4試合の結果を「優勝」の一言で畳まない
4勝と並べると、どの試合も同じように勝ったように見えます。でも実際は、終盤の連続得点、逆転、PK戦、決勝での勝ち越しと、越えた難しさはそれぞれ違いました。その4試合を一本につないでいたのが、上田綺世の4得点だったと私は感じています。
9月24日のウルグアイ戦は3-1。11分に松木玖生が先制した後、42分にマキシミリアノ・アラウホに追いつかれました。それでも90+1分に塩貝健人、90+6分に上田が決め、終了間際の二つのゴールで試合を引き寄せました。
9月28日のベネズエラ戦は、先に点を許してからの2-1。後半から出場した上田が2得点を挙げ、試合をひっくり返しました。10月1日のエクアドル戦では90分間で得点できず、0-0のままPK戦へ。鈴木彩艶が相手の3人目を止め、日本は5人全員が決めて5-3で勝ちました。
10月5日のニュージーランド戦は、28分に上田が先制。32分にベン・オールドの得点で追いつかれましたが、71分に堂安律が勝ち越し、日本が2-1で優勝を決めました。4試合の90分間を合計すると、7得点3失点です。
上田は4試合すべてに出場し、ウルグアイ戦で1点、ベネズエラ戦で2点、決勝で1点。最初の3試合は途中から入り、決勝では先発しました。終盤の追加点、逆転を完成させた2得点、決勝でこぼれ球へ素早く反応した先制点と、ゴールの形も同じではありません。出場の仕方が変わっても、必要な場所へ入っていく姿が頼もしく見えました。
日本にとって今回の優勝は、2011年以来15年ぶり、通算12回目です。ただ、私はこの明るい数字だけで4試合を語り切りたくありません。先制後に追いつかれたウルグアイ戦とニュージーランド戦、先に点を許したベネズエラ戦、90分で得点できなかったエクアドル戦がありました。その簡単ではなかった時間も忘れずにいたいです。それが次の変化を見る土台になると思います。
3バックから4バックへ――決勝で増えた選択肢
3バックから4バックへ広がった選択肢と、攻撃参加後の守りを対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
決勝で見えた収穫は、守る人数や並び方を変えても、攻める姿勢を保てたことです。ただし、前へ出たところでボールを失った直後には怖さもありました。新しい形が使えた喜びだけでなく、次へ残った課題にも目を向けます。
日本はエクアドル戦までの3試合を、後ろに3人を置く形で始めました。ニュージーランドとの決勝では、後ろを4人にした4-2-3-1へ変更。右から中野就斗、瀬古歩夢、伊藤洋輝、鈴木淳之介が並びました。
森保一監督は試合後、試合の途中で形を変えるだけでなく、相手より有利に戦える形を最初から選べるようにするための挑戦だったと説明しています。11月のブラジル、パラグアイ戦、さらにアジアカップを見据え、戦い方の幅を増やそうとしていました。
その変化は攻撃に表れました。日本のシュートは20本で、ニュージーランドは3本。サイドバックと呼ばれる両端の守備選手も積極的に前へ出て、中野のクロスから28分の先制点が生まれました。
一方、その4分後には日本のパスをクリス・ウッドに奪われ、ベン・オールドへつながれた速い攻撃から同点にされました。瀬古は試合後、中野が戻っていない状況を自分が確認できておらず、相手のパスコースを絞れていれば防げた場面だったと振り返っています。
新しい並びには楽しさだけでなく、整える難しさもありました。それでも、失点後も攻撃を止めず、71分の勝ち越しまでたどり着いたことに、結果とは別の手応えを感じました。
6人の初出場が、プレーの記憶に変わった4試合
今回の4試合では、6人が日本代表のピッチに初めて立ちました。その一人で初招集だった松木玖生は、初戦で初得点まで記録。新しい名前が、ゴールや先発、シュート、クロスといった具体的な場面に変わった4試合でした。
9月17日のメンバー発表で初招集されたのは、横浜F・マリノスの谷村海那、サウサンプトンFCの松木、KVCウェステルローの齋藤俊輔、サンフレッチェ広島の中野就斗の4人です。初招集は初めて代表に呼ばれること、初出場は実際に試合へ出ること。ここは混同しないようにしたいです。
最初に一歩を踏み出したのは松木でした。9月24日のウルグアイ戦に右サイドの守備と攻撃を担う位置で先発し、11分に左足で先制点。代表デビュー戦で、そのまま初得点も残しました。
ベネズエラ戦では齋藤、中野、熊坂光希、GKの小久保玲央ブライアンがそろって先発し、代表デビュー。谷村も80分から出場しました。松木と合わせ、この4試合で初出場したのは6人です。齋藤は前半にゴール前の左側からシュートを放ち、GKの小久保は前半終了前の連続したコーナーキックで、瀬古歩夢とともに相手のヘディングを防ぎました。
熊坂は先発しましたが、負傷のため8分に田中聡と交代しました。8分間だけでプレーを評価することはできません。それでも、代表デビューの喜びと早い交代への悔しさが同じ試合に残ったように感じます。もう一度、代表のピッチに立つ姿を待ちたくなりました。
その後、谷村はエクアドル戦で最前線に立って先発。中野は決勝で右の守備選手として先発し、外側を駆け上がって、上田綺世の先制点につながるクロスを入れました。
松木の左足、齋藤の仕掛け、小久保が守った前半、谷村が立った最前線、中野の駆け上がり。誰かと比べなくても、それぞれの名前と一緒に思い出せる場面が増えたことが、私は素直にうれしいです。
海外から見えた「優勝にふさわしい」と、ニュージーランドの設計
海外からは、日本が試合を動かす側だったと評価されていました。その一方、ニュージーランドが形を変え、選手同士の間を狭くして対抗したことも、相手監督の言葉から見えてきます。日本だけが好きに進めた90分ではありませんでした。
Japan, ranked 17th in the world, controlled most of the contest and ultimately deserved the trophy on the balance of chances and possession. (訳)世界ランキング17位の日本は試合の大半を支配し、チャンスとボール保持の内容から見ても、最終的に優勝にふさわしかった。
— Oceania Football Center(2026年10月5日)
決勝のシュート数が日本20本、ニュージーランド3本だったことを思えば、「優勝にふさわしい」という評価には私も素直にうなずけます。試合後の高揚感だけではなく、対戦国側から見ても日本が主導していたと伝わるのは、やっぱりうれしかったです。
一方、ニュージーランドのダレン・ベイズリー監督は、日本の強さに対抗するために形を変え、選手同士の間を狭くして、守備の選手同士が助け合える状態を保ったと説明しています。それによって日本を長い時間困らせ、カウンター、つまりボールを奪ってすぐ前へ出る攻撃も脅威になったと振り返りました。
ベイズリー監督の言葉から、ニュージーランドはただ耐えるのではなく、日本がボールを動かしにくい場所を作り、前へ出る機会を待っていたように私には見えました。日本が主導したことと、相手の工夫が効いた時間があったことは、同じ90分の中で両立していたのだと思います。
11月14日のブラジル戦へ、持っていきたい問い
11月14日のブラジル戦で私が確かめたいのは、4勝の続きをそのまま見られるかではありません。相手と試合の流れに合わせて選手の並びを選び、攻めた直後の守りまで整えられるか。そこが、この再戦を見るいちばん大きな問いです。
日本は6月29日、FIFAワールドカップの決勝トーナメント1回戦にあたるラウンド32でブラジルと対戦しました。先に点を奪いながら、後半に追いつかれ、終了間際に勝ち越されて1-2で敗れています。
再戦は11月14日、シンガポール・ナショナルスタジアムで行われます。17日には同じ会場でパラグアイと対戦。この大会では最終順位を決めず、90分を終えて同点でも延長戦やPK戦は行いません。
だから私は、キリンカップの4勝をそのままブラジル戦の予想にはつなげず、ブラジルを相手に森保監督がどの並びを先発で選ぶのかを見たいです。途中で形を変えるなら、誰をどこへ動かすのか。今回初出場した6人がもし再び呼ばれたら、どんな役割を任されるのかにも注目します。
代表が集まらない約1か月も、空白ではありません。選手たちはそれぞれのクラブへ戻り、違う役割や相手の中で試合を重ねてから、もう一度集まります。次に呼ばれる顔ぶれを今から決めつけず、今回プレーした一人ひとりを追っていく。そう考えると、11月までの待ち時間も少し楽しくなりました。