運営者の雑感

PKストップから一週間――なでしこ対ハイチ戦プレビュー

日本時間10月10日午前3時、フランスで初めてハイチと向き合うなでしこジャパン。遠征メンバー23人のうち22人が海外クラブに所属する顔ぶれは、狩野倫久監督が挙げる相手の高い身体能力にどう応えるのか。初招集の島田芽依を含む組み合わせは、4日後のドイツ戦へ何をつなぐのでしょうか。

夜のゴール前でボールを止めた女子ゴールキーパーの背後に、朝焼けのフランスと次の競技場へ続く光の道が広がるイラスト
イラスト: OpenAI

北朝鮮の3人目が蹴ったPKを、大場朱羽が止めた。あの夜から、まだ一週間です。今度の舞台はフランス。午前3時に始まるなでしこジャパン対ハイチへ、アジア大会決勝の余韻を抱えた私の気持ちも向かっています。

10月2日の決勝は90分を2-2で終え、延長戦でも決着がつかずPK戦へ。大場のセーブもあって日本が5-3で勝利し、大会3連覇を決めました。そして翌3日、大場はハイチ戦とドイツ戦に臨む欧州遠征へ追加招集されています。

金メダルを手にしたばかりなのに、もう次の試合が目の前にある。その慌ただしさに、私は少し驚きました。大場はどんな気持ちで新しい一週間に入ったのでしょう。決勝の緊張がまだ記憶に残っているぶん、舞台も相手も変わる一戦を前に、私まで少しそわそわしています。

初対戦、配信はABEMAで

ハイチ戦は、日本時間10月10日午前3時にキックオフ予定です。会場はフランス・サン=トゥアンのStade Bauer(スタッド・バウアー)。試合はABEMAで無料生配信されます。金曜の夜から待つ場合は、日付をまたいで土曜日に入ってからの試合です。

現地では10月9日午後8時の開始です。日本で見る私は、さすがに生活のリズムと相談したくなります。翌朝の予定を考えると、試合前から眠気との勝負になりそうです。

2026年6月16日更新のFIFAランキングでは、日本が5位、ハイチが47位です。ただ、この数字だけで試合の流れまで決めてしまうのは早いと感じます。両代表は今回が初対戦。過去の試合でつかんだ感覚を頼りにできないぶん、立ち上がりから相手の速さや距離感をどう読むのかが注目です。

私は順位の差よりも、なでしこジャパンが初めて向き合うハイチにどれだけ早く合わせ、自分たちの形へ持っていけるのかが気になります。初対戦の最初の数分から、目が離せません。

国内組は一人だけ――欧州遠征メンバーの顔つき

9月22日に発表された欧州遠征メンバーは23人で、そのうち22人が海外クラブ所属。国内クラブから選ばれたのは、三菱重工浦和レッズレディースの高橋はな一人でした。その後に選手の入れ替わりがありましたが、現在もこの内訳は変わっていません。

JFAは9月29日、松本真未子と植木理子がけがのため不参加になると発表しました。その後、大場朱羽と土方麻椰が追加で呼ばれ、メンバーは23人のままです。

アジア大会を戦ったメンバーから加わったのは大場一人でした。ほかの多くの選手は9月22日に発表された一方、大場の追加招集は決勝翌日の10月3日。ひとりだけ違う時間の流れから合流したことが、この遠征の顔ぶれを少し特別に見せます。

もう一人、気になるのがFW島田芽依です。今回がなでしこジャパン初招集。狩野倫久監督は、前線でボールを収めて攻撃の出発点になれる力強さを評価し、ゴールを決める役目を担ってほしいと期待を寄せています。

海外組が多いと聞くと、つい華やかな名前に目を奪われます。でも、普段は違う国やリーグで戦う選手たちです。短い準備のなかで、パスを出す瞬間や走り出す瞬間をどこまで合わせられるのか。初招集の島田や追加招集の土方を含め、どんな組み合わせがピッチに並ぶのか、楽しみで仕方ありません。

ハイチの身体能力に、当日どう向き合うか

ハイチ戦で私が見たいのは、相手の高い身体能力を正面から受け続けず、ボールの動かし方と、失った直後の守りで対応できるかどうかです。力と力のぶつかり合いだけにせず、どこで相手を動かし、どこで前進するのか。そこが一番の注目点です。

狩野倫久監督は2026年9月9日の公式コメントで、ハイチについて、多くの選手がフランスをはじめとする各国リーグでプレーし、高い体力と身体能力を備えているという印象を語っています。では、日本はその強さをどう受け止めるのでしょう。

近くにいる選手同士の短いパスだけでは、相手に囲まれる場面もあるかもしれません。そんなとき、相手の後ろにある空間へボールを送るのか。それとも、相手が集まった場所とは反対側へ展開するのか。パスを回したあとに空いた場所まで使えたら、試合の景色も変わりそうです。

ボールを失った直後も見逃せません。最初に誰がボールを持つ相手へ近づき、その周りの選手がどの道をふさぐのか。ハイチに前を向いて走る時間を与えないための動きがそろうかを見たいです。

長谷川唯、長野風花、谷川萌々子らが出場しても、名前が並ぶだけで中盤がうまく回るわけではありません。誰がパスを受け、誰が前へ出るのか。その関係を考えるうえで、マンチェスター・シティ・ウィメンのアンドレー・イェーグレルツ監督が長谷川について語った言葉が心に残ります。

“She is very good in making herself available and she can see where there are spaces to use” (訳)「彼女はボールを受けられる位置に入るのがとても上手で、使えるスペースを見つけられます」

— アンドレー・イェーグレルツ(マンチェスター・シティ・ウィメンの監督)、The Guardian(2025年9月15日)

私は、この評価にとても納得しました。長谷川の良さはボールを持ってからだけではなく、その前に空いた場所を見つけ、味方が渡しやすい位置へ入るところにもあるからです。初めて向き合う相手をどれだけ早く読み、受ける場所と守る場所を選べるか。そこがハイチ戦の大切な見どころになると感じています。

ハイチからドイツへ、二試合で広げたい選択肢

二つのサッカー場の間で枝分かれした光の道を、異なる歩幅の女子選手たちが次のピッチへ進むイラスト 二試合を通じて戦い方の選択肢が広がる様子を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。

今回の欧州遠征は、ハイチ戦だけで終わる話ではありません。狩野倫久監督が掲げたテーマは、特徴の異なる二つの相手と戦い、攻め方と守り方の選択肢を広げることです。ハイチ戦で見える課題や手応えが、次のドイツ戦でどう変わるのか。そこまで含めて、この二試合を続けて見る面白さがあります。

遠征第2戦のドイツ戦は、現地時間10月13日午後5時45分、日本時間14日午前0時45分にキックオフ予定です。会場はドイツ・ブレーメンのWeserstadion(ヴェーザーシュタディオン)。NHK総合で生中継され、ABEMAでも無料生配信されます。

9月23日の公式会見で、佐々木則夫JFA女子ナショナルチームダイレクターは、ハイチ、ドイツとの遠征でさまざまな経験を積み、監督が考えるチームの戦い方を高めて次へ進むことが大切だと語りました。狩野監督も同じ会見で、異なる相手に攻守の両面でどう戦うかを追い、戦い方の幅を広げることが二試合のテーマになると説明しています。

ハイチ戦で試した形のうち、ドイツ戦にも残るのはどれでしょう。相手が変われば、使わない形や、少し手を加える形も出てくるかもしれません。二試合を並べることで、選手たちが何を持ち帰り、何を変えたのかが見えてきます。

初招集や追加招集を含め、違う場所から集まった23人です。ハイチ戦で一つ試し、ドイツ戦でもう一度考え直す。その積み重ねで、チームが使える選択肢を一つでも増やせたなら、午前3時まで起きて見届けた私の気持ちも、少し明るくなると思います。

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