57分の千葉玲海菜、81分の土方麻椰――なでしこ対ハイチ5-1、後半の2点に感じた楽しさ
清家貴子の左足、浜野まいかの浮き球、長谷川唯の飛び出し。なでしこ対ハイチ5-1の前半には、ゴールまでの違う道筋があった。3点を先行した後、前半終了間際に返された1点はどう受け止めたいか。欧州遠征初戦の攻撃と守備を振り返り、日本時間14日のドイツ戦で目を向けたい場面を探る。
57分、長谷川唯が前へ通したパスに千葉玲海菜が走り込み、ボールを止めずに右足で決めた。届いた、その次にはもうシュート。その短さに私はわくわくした。ハイチ戦の5得点を、最後のひと蹴りだけでなく、そこまでボールが届く場面から振り返りたい。ゲキサカ(ライブドア掲載)
なでしこジャパンは国際親善試合でハイチに5-1で勝利。フランス・サン=トゥアンのスタッド・バウアーで、現地10月9日、日本時間10日午前3時に始まった試合だった。共同通信、JFA
ゴールが増えるたびにうれしくなる一方で、前半終了間際に返された1点は少し引っかかっている。攻撃の場面も、気になった失点も残しておきたい。まずは、26分から続いた前半の3ゴールへ時間を戻そう。ゲキサカ(ライブドア掲載)
26分、33分、38分――ゴールまで届いた三つの形
前半の3ゴールは、最後にボールが届くまでの形がそれぞれ違っていた。私はそこが面白かった。清家貴子の足元へつながったボール、浜野まいかの浮き球、そして長谷川唯が自分でもゴール前へ走った場面。同じ3得点でも、目に残るところが違う。
先発には、ゴールを守る大熊茜、石川璃音、高橋はな、北川ひかる、山本柚月、谷川萌々子、宮澤ひなたが入った。長谷川、長野風花、清家、浜野も試合開始から出場した。ゲキサカ(ライブドア掲載)
26分、宮澤が左からゴール前へ折り返し、長谷川がつないだボールを清家が左足で決めた。清家のシュートを喜びながら、その一つ前、さらにもう一つ前のパスにも目が向く。宮澤から長谷川へ渡ったところまで、もう一度見たくなるゴールだった。ゲキサカ(ライブドア掲載)
33分は、思わず「そのまま入るの?」となった。右側から清家、谷川、宮澤とつながり、左にいた浜野へ。浜野が左足で浮かせたボールは、そのままネットへ届いた。シュートを狙ったかどうかは分からないけれど、ふわりと上がった軌道には驚かされた。ABEMA TIMES
38分には、長谷川が左の北川ひかるへパスを出し、自分もゴール前へ走った。北川が横から送ったボールを谷川が受け、長谷川へ渡す。長谷川は一度足元に収めて、右足で決めた。出した本人が、今度は受け取る側にいる。間に入った谷川のパスも含めて、見ていて楽しい攻撃だった。ABEMA TIMES
フランスの地域紙La Clé Publiqueは、試合前の記事で長谷川をこう評していた。
Yui Hasegawa, milieu de Manchester City, excelle dans l’orientation du jeu et la précision des passes. (訳)マンチェスター・シティの中盤でプレーする長谷川唯は、試合の組み立てとパスの精度に秀でている。
— La Clé Publique(2026年10月9日)
パスの精度という評価には、私もうなずく。この日の38分では、それに加えて、渡した後も走り続けたところが心に残った。ボールを送る足元だけでなく、その後にゴール前へ向かう背中まで追いたくなった。
千葉が受け手から送り手へ、土方につないだ攻撃
後半の2ゴールは、どちらも長谷川唯のパスに千葉玲海菜が走り込むところから始まった。57分と81分には、同じ2人のつながりが攻撃の入口にある。交代で入った選手たちにどうボールが届いたかを、順にたどってみよう。ゲキサカ(ライブドア掲載)
後半開始から、浜野まいかと高橋はなに代わって千葉と古賀塔子が入った。57分の4点目は、長谷川唯が相手の守備の間へ通したパスに千葉が反応して生まれた。ゲキサカ(ライブドア掲載)
パスを出す長谷川と、その先へ走る千葉。走る先へボールが届くと、思わず「行ける!」と声が出た。そして81分にも、この2人が関わる。ただ、今度は千葉の先にもう一人いた。
80分、石川璃音に代わって出場した土方が、81分に5点目を決めた。長谷川のパスで抜けた千葉が、ゴール前の遠い側にいた土方へボールを送り、土方が仕上げた。Sofascore、ゲキサカ(ライブドア掲載)
ここで私が気になったのは、千葉が受けたところで攻撃が終わらなかったことだ。57分には自分のシュートへ進み、81分には仲間へ渡す。ゴールへ走り込んだ先で、決める側から届ける側へ役割が変わるところに、千葉のもう一つの見どころを感じた。
千葉はユベントス、土方はアストン・ビラに所属する。土方は10月4日に追加招集された選手でもある。JFA招集メンバー、JFA追加招集発表
普段は別のクラブでプレーする2人が、代表で一つの攻撃を完成させたところがうれしい。この日は5人が得点し、追加招集の土方もその一人になった。短い出場時間にも目を離せない場面が詰まっていると感じる。
長谷川のパスで前へ抜ける千葉を追っていた私の視線は、横へ送られたボールとともに土方へ移った。土方が決めたところで、ようやく息をついた。
3-0で終わらなかった前半、気になった1失点
得点の喜びと守備への関心を色と形で表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
前半を3-0で終えられなかったことは、5-1という結果だけでは片づけたくない。勝利はうれしい。でも、休憩に入る直前の45+3分には、立ち止まって見たい場面がある。
失点は45+3分、前半の追加時間だった。ネリリア・モンデジールが横からゴール前へ送ったボールを、バチェバ・ルイが得点につなげた。日本は3-0のまま休憩に入ることはできず、3-1で前半を終えた。Gazette Haiti、Foot Mercato
3点取れたところで少しほっとしていた私は、「ああ、ここで返されたか」となった。目を向けたいのは、モンデジールに横からボールを送られるまでと、ルイにゴール前で受けられた瞬間だ。ボールの近くにいる選手だけでなく、周りがどこへ戻り、誰を見ているのか。得点された瞬間だけでは、守り方の全部は見えてこないと感じる。
後半は日本が2点を加え、ハイチには追加点を許さなかった。Foot Mercato それでも、前半の気がかりまで消えたわけではない。次の試合では、ボールを失った後の戻り方と、横からゴール前へ届くボールへの対応を見たい。5つのゴールを喜びながら、守る場面にも目を向けて待とうと思う。
次は日本時間14日、ブレーメンでも見たい受け渡し
次のドイツ戦で私が楽しみにしているのは、パスを出した後の動きと、交代で入る選手へのつながりだ。
試合はドイツ・ブレーメンのヴェーザーシュタディオンで、現地10月13日17時45分、日本時間10月14日午前0時45分に始まる予定。なでしこジャパンがドイツ女子代表と対戦する。JFA
前半には、長谷川唯が渡したボールをゴール前で受け直した。後半には、千葉玲海菜が走った先から土方麻椰へ渡した。あの場面を思い出すと、次もボールだけを追うのはもったいない気がする。
守備では、相手がゴールへ向き直ったときの周りの戻り方も気になる。横から届くボールだけでなく、それを受ける相手にも目を配る理由になったのが、前半最後の失点だった。
遠征のメンバーにも変化があった。JFAは10月9日、田中美南のけがによる離脱と、成宮唯の追加招集を発表した。成宮は10月10日に合流予定とされた。JFA
田中には、まず回復を願いたい。遠征中にも顔ぶれが動くなか、次の90分の組み合わせはまだ分からない。それぞれ違うクラブから集まった選手が、どんなつながりを見せるのか。今はその問いが頭にある。
ハイチ戦で目にしたのは、5-1という数字に収まりきらない動きだった。今度は誰と誰の受け渡しに、思わず声が出るだろう。ブレーメンでも、ボールを渡した選手のその先まで追ってみたい。