谷川萌々子の先制点を、勝利につなげたかった――なでしこ対ドイツ1-2雑感
ブレーメンで先制したなでしこは、ドイツに1-2。28分と73分の失点では何が違ったのか。ビュールとダルマンの左サイド、終盤に前線へ上がった高橋はな。狩野監督が課題に挙げた「90分を通したゲームマネジメント」とは、どんな場面のことだろう。次のブラジル戦を前に、問いが残った。
15分、藤野あおばのパスが谷川萌々子へ。谷川はゴール前のエリア内で、体を小さく揺らして相手の守備の選手をかわし、先制点を決めました。あのシュートには、私も胸が弾みました。だからこそ、なでしこ対ドイツ戦の1-2は悔しい。JFA試合レポート、DFB試合レポート
試合は日本時間10月14日0時45分、現地では13日、ブレーメンのヴェーザーシュタディオンで始まりました。日本は28分に追いつかれ、73分に勝ち越されて敗れました。JFA試合記録
先制できた手応えはあった。でも、そのあとどう試合を進めるかは難しかった。どうすれば、あの1点を勝利につなげられたのだろう。15分、28分、73分。あの夜をもう一回、順番に思い出してみます。
15分、藤野あおばから谷川萌々子へ
あの連係、楽しかったです。藤野あおばのパスと谷川萌々子の動きが合い、相手をかわしてゴールまで届くところに、見応えがありました。
藤野からボールが渡った時は「ここからどうする?」。谷川が相手をかわすと「打てる!」。そしてシュートが決まる。決まった瞬間の驚きだけでなく、受けたあとにゴールへ向かっていく動きが楽しかったんです。
藤野とともに先発した谷川は、試合後、中盤の選手と前で攻める選手がお互いの動きを見ながらプレーしていたこと、藤野が良いボールを出してくれたことを話しています。その言葉を聞くと、決めた谷川に加えて、パスを出した藤野のほうにも目がいきます。JFA試合記録、JFA試合レポート
Wir hatten teilweise nicht die Chance, überhaupt in den Zweikampf zu kommen (訳)そもそも球際の勝負に入る機会すらない時間帯もありました。
— クリスティアン・ヴュック監督(ドイツ女子代表)、t-online(2026年10月14日)
序盤、中盤で日本の人数が多かったため、ドイツはボールを取り合うところまで近づけなかった。記事ではそう説明されています。相手の監督にそう言わせた日本のプレーが、私はすごくうれしいです。ただ、これは序盤についての言葉。試合全体を日本が思いどおりに進めた、という話には広げられません。
この形をもう一度見たかった。
28分の同点弾から、もう一度ゴールへ近づく難しさ
先制のあと、日本は自分たちのゴール近くで守る時間が増えました。相手のゴール前まで攻撃がなかなか届かず、私はハラハラしながら見ていました。ドイツも試合の中で立つ位置を変え、日本への対応を探っていました。
ヴュック監督は試合後、日本の攻撃への対応に苦労したものの、中盤の位置を少し動かして対応したと説明しています。ドイツの中盤の選手、シューケ・ヌスケンも、中盤で日本より人数が少なくなる場面に気づき、立つ位置を変えたと振り返りました。DFB試合後コメント
日本の先制を喜んでいた私には、相手もその場で答えを探していたことが印象に残りました。うまくいった形があっても、相手はそれに対応してくる。その時に日本はどうするのか。「もう一度つないでほしい」と待っていました。
28分、ドイツは左サイドのクララ・ビュールからリンダ・ダルマンへつなぎ、ダルマンが同点ゴール。40分にもビュールが左から仕掛け、シュートをゴール脇へ放ちました。DFB試合レポート
先制した時には次の日本の攻撃を待っていたのに、ドイツが左へボールを運ぶと、「また来る?」と身構えるようになりました。ビュールが仕掛け、ダルマンへつながる。あの二人の連係に、チームでどう対応するのだろう。
一方、日本にも33分、清家貴子がゴールへ向かい、ドイツの守備の選手、ゾフィア・クラインヘルネに止められた場面がありました。前半は1-1で終了しています。DFB試合レポート
清家の場面があったから、「先制のあとは何もできなかった」とは言いたくないです。ゴールへ向かうきっかけはあった。そのチャンスを、次のチャンスへつなげられないところがもどかしかったです。守る時間をしのいだあとに、どう相手のゴールへ近づくか。後半も、そこを見届けたくなりました。
73分、ボールを失ってからゴールまで
73分の失点は、やっぱり悔しいです。攻撃を始めようとしたところで、ドイツにあっという間に日本のゴール前まで攻め込まれてしまった。前へつなぐはずだったボールが、急にこちらのゴールへ向かう。その切り替わりの速さに、ひやっとしました。
日本は後ろからパスをつないで攻撃を組み立てる途中で、ボールを失いました。ドイツのメリッサ・ケスラーがビュールへパスを送り、ビュールが勝ち越しゴールを決めています。DFB試合レポート
「つないで前へ」と見ていたのに、「えっ、もう守らなきゃ?」と戸惑いました。パスを受ける味方がどこにいるか、奪われたら誰が相手に近づくか。ボールを持つ選手の周りの動きや、失った直後の備えまで気になります。
28分はドイツの左からの連係、73分は日本がボールを失ったところからの失点でした。同じように1点を失っても、その前に起きていたことは違います。相手がつないでくる時と、自分たちの攻撃が急に止まった時。それぞれの場面で、チームがどう動き直すかを考えたくなりました。
82分には山本柚月に代わって石川璃音が入り、高橋はなが前線へ上がりました。高橋が前へ出ると、「お願い、もう1点!」と声をかけたくなりました。けれど、試合は1-2のまま終了しました。JFA試合記録、JFA試合レポート
攻めようとしていた瞬間から守ることになり、最後は追いつくために前へ出る。試合の状況は変わっていくのに、得点は届かなかった。その悔しさが残りました。狩野倫久監督が課題に挙げた「90分を通したゲームマネジメント」――状況に合わせた試合の進め方という言葉を、私はこの切り替えや終盤の姿と重ねて受け止めています。JFA試合レポート
「90分を通したゲームマネジメント」を、次に見る楽しみに
仲間と守りを整える姿と、広がって攻撃へ向かう姿を対比したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
私が次に見たいのは、良い形で攻める場面に加えて、相手に押された時やボールを失った時にも、仲間同士で助け合って試合を進める姿です。
狩野監督は、先制できたことに加え、守る位置を状況に合わせて変えられたことを評価しています。相手のゴール近くでボールを奪いに行くだけでなく、ピッチの中ほどや自分たちのゴール近くで構える守り方も使い分けた。一方で、課題に挙げたのが「90分を通したゲームマネジメント」でした。JFA試合レポート
試合の進め方というこの言葉を、私なりに受け取ると、気になるのは三つの場面です。相手に押されている時間をどう過ごすか。ボールを奪ったあと、どう攻撃へ移るか。そして、失った瞬間にどう守るか。次はその時、ボールの近くにいない選手の動きにも目を向けたいと思います。
ドイツ協会の試合レポートは、日本が後半に選手同士の間隔を狭め、ダルマンやビュールが一人で守備を突破しにくくなったと評価しています。DFB試合レポート
守り方を変えられた部分はあった。それでも逆転を許した。この両方を受け止めたいです。「良い経験だった」だけでは、私の悔しさは収まりません。15分のようにパスと動きが合う場面と、73分のようにボールを失った直後の対応。その二つを、次の試合でも目で追いたいです。
欧州遠征はハイチ戦の5-1とドイツ戦の1-2で、1勝1敗。次は11月29日と12月5日、国内でブラジル女子代表との2連戦が予定されています。JFA試合レポート
苦しい時間のあとに、もう一度みんなでゴールへ向かう場面を見たいです。先制点で感じたわくわくは、負けたあとも消えていません。ブラジル戦でも、そんな瞬間を待つのが楽しみです。