31分の我慢、47分と48分の解放――U-21日本代表対タイ3-0雑感
豊田スタジアムでのU-21日本代表対U-23タイ代表。押し込みながら0-0が続いた前半と、後半が始まって二分で景色が変わった夜。欧州から合流した三人が同じ試合に立った意味や、タイ現地紙が書いた「一歩か二歩」の速さにも触れます。うれしい結果なのに、先に浮かぶのは別の場面でした。
終わってみれば3-0。でも、私の中でこの試合は「三つ入った夜」より、「一つ目までを待った夜」として残っています。
9月23日、豊田スタジアム。アジア競技大会(愛知・名古屋)のグループA最終戦です。すでに準々決勝進出を決めていたU-21日本代表が、U-23タイ代表を下して首位で通過を決めました。うれしい結果なのに、思い出すのは前半の小さな焦りと、後半開始直後に空気がほどけた瞬間です。
31分までにたまった息
日本は立ち上がりからタイ陣へ入り、ボールを失っても高い位置で囲み直しているように見えました。石井久継のシュートや道脇豊を狙ったクロスもあり、「もう入りそう」と思う場面は増えていきます。それでも得点板は動かない。押している時間ほど、一つのミスが妙に怖くなるんですよね。
その息苦しさをほどいたのが31分でした。石橋瀬凪が左サイドの深い位置まで運び、折り返しを中島洋太朗がゴールへ。派手にこじ開けたというより、何度も続けた形がようやく届いた先制点に見えました。
中島のゴールが決まった瞬間、私の気持ちは「すごい」より先に「よかった」が出ました。優位に進めることと、実際に一点を取ること。その間には、数字で見るよりずっと長い距離があるんだなと感じます。
47分と48分、続けて入った別々のゴール
試合のリズムが一分で二つの流れへ分かれる感覚を表したイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
後半が始まって2分、47分です。右からのクロスのこぼれ球をボックスの外で拾った小杉啓太が、そのまま左足でシュートを突き刺します。その一分後には、ペナルティーエリアの左で受けた石井が鋭い切り返しから左足を振り抜いて3点目。1-0だったスコアが、時計が一つ進む間に3-0へ変わりました。
この二つがまったく違う表情だったのも面白かったです。小杉の一撃は、少し離れた場所からひと振りで景色を変えるゴール。石井の得点は、狭いところで一度相手をずらしてから決めるゴール。一気に二点が入ったのに、同じことを繰り返した感じはしませんでした。
前半から重ねてきた攻撃が、ある瞬間にまとめて報われる。そんなサッカーの不思議さが、47分と48分に詰まっていた気がします。焦れた時間まで含めて、私はこの短い時間が好きでした。
途中合流の三人が同じ夜に立った
グループ最終戦の前日、9月22日に合流した小杉、石渡ネルソン、ンワディケ ウチェブライアン世雄は、この試合で三人ともピッチに立ちました。小杉は先発して得点。石渡は55分、ンワディケは80分から出場しています。
小杉はアイントラハト・フランクフルト、石渡はシントトロイデンVV、ンワディケはオールボーBKに所属しています。ただ、所属先の名前が増えただけで組み合わせが完成するわけではありません。短い時間でも同じ試合の緊張を分け合えたことに、私は得点とは別の価値を感じました。
日本はグループステージ3試合でフィールドプレーヤー全員を起用しました。「選手層」という少し硬い言葉が、名簿ではなく、実際に交代でピッチへ入っていく人の姿として見えた夜でもありました。
タイから見えた日本の速さ
タイの現地メディアは、日本のプレーをこんな言葉で表しています。
Their play was consistently one or two steps faster than ours. (訳)日本のプレーは一貫して、自分たちより一歩か二歩速かった。
— Thairath(2026年9月24日)
私は、この「一歩か二歩」は走る速さだけではないと思いました。奪われた直後に寄せること、次の選手が前へ出ること、空いた場所へ入ること。判断が連なった結果、タイ側には全体が先に動いているように映ったのかもしれません。
ただ、前半が31分まで0-0だったことも忘れたくありません。速く動けているように見えても、一点が生まれるまでは落ち着かない。その焦れったさがあったから、タイ側の評価にも素直にうなずけました。
12得点0失点は、次の試合の答えではない
日本は3試合で12得点、無失点。グループAを3勝で終えました。きれいな数字ですし、振り返れば素直にうれしくなります。
でも、準々決勝はまた別の緊張が始まります。次戦は9月26日19時30分、豊田スタジアムで朝鮮民主主義人民共和国代表と対戦します。ここまでの数字は、次の90分を先に決めてくれるものではありません。
だからこそ持っていきたいのは、得点数よりタイ戦の31分までです。うまく進んでいるようで一点が遠い時間にも、形をやめなかったこと。そして47分と48分に、違う選手が違う方法で試合を動かしたこと。一発勝負でも、そんな粘り強さをまた見られたらうれしいです。