加藤千佳の2分、丹野凜々香の13分――浦和L対ベレーザ4-2、前半6得点の濃さ
シュート数では相手を下回りながら、浦和は異なる経路から得点を重ねました。前半の華やかさと、得点の動かなかった後半はどうつながっていたのでしょうか。ベレーザが押し返した時間、勝点7で残り3試合となったクラシエカップの現在地まで、浦和駒場の90分に流れた二つの表情を追います。
11分、ベレーザの猶本光のゴールで1-1。けれど、時計が13分を示したときには、丹野凜々香が浦和をもう一度リードへ導いていました。この短い2分間が、得点を喜んだり、息をのんだりする暇もない前半の濃さを、そのまま表していたように感じます。
2026年10月3日、浦和駒場スタジアムで行われたクラシエカップのリーグステージ第5節。三菱重工浦和レッズレディースは日テレ・東京ヴェルディベレーザに4-2で勝ちました。前半の45分間だけで6回ゴールが決まり、後半は両チームとも無得点。1,651人が見守った一戦です。
その6得点の中でも、私の心にいちばん鮮明に残ったのは、追いつかれた直後に浦和が返した2分間です。結果の数字だけではこぼれてしまう、あの慌ただしさと反応の速さから振り返ります。
11分に追いつかれ、13分に返した
この試合の序盤を分けたのは、2分の先制点だけではなかったと思います。11分に追いつかれても、浦和は足を止めずに次のゴールへ向かいました。私は、その返し方にこの日の強さを感じました。
2分、右側から入ったボールが相手ゴール前にこぼれます。そこへ加藤千佳が走り込み、迷わず左足を振って先制。立ち上がりの緊張がほどけるような一撃でした。
でも、ベレーザもそのままにはしてくれません。11分、式田和が右からボールを運んでゴール前へ浮き球を入れると、こぼれたボールを猶本が左足で決めました。猶本は先発し、74分までプレーしています。
猶本は2012年に浦和レッズレディースへ加入し、ドイツでのプレーを挟んで2020年に復帰。2025年6月にベレーザへ完全移籍しました。長く過ごした古巣との試合で決めた同点弾は、私にはずしりと重く感じられました。このまま試合の流れまでベレーザへ傾いてしまうのではないかと、少し怖くなったんです。
ところが、その不安を抱える時間は長く続きません。13分、大西若菜が左から入れた浮き球を相手の守備の選手がクリアすると、そのボールを丹野が拾って前へ運び、左足で勝ち越しゴール。追いつかれてから、わずか2分後でした。
同点にされた落胆を引きずる間もなく、もう一度ゴールへ向かった浦和。こぼれたボールへ入り、自分で運び、左足で仕上げた丹野の一連のプレーに、私は思わず声が出ました。
浦和の4点は、すべて左足だった
異なる4つの得点経路と、同じ左足での決着を重ねたイメージ。AI生成イラスト(実際の試合場面ではありません)。
序盤に生まれた加藤と丹野の2得点に続き、大西とサンシャイン・フォンテスも左足で決めました。浦和の4得点は、最後の一振りがすべて左足。ただし、そこへたどり着くまでの道のりは、一つひとつ違っていました。
24分、加藤が右から中央へ、地面を転がすパスを送ります。受けた大西はその場ですぐに打つのではなく、自分でボールを前へ運んでから左足で3点目を決めました。
13分の勝ち越しから11分間、スコアは動きませんでした。ようやくひと息つけたところで、加藤から大西へボールが渡り、大西が自分でシュートを打てる場所まで進む。その途中の動きまでじっくり味わいたくなるゴールでした。
そして40分。右側にいた長嶋玲奈が頭で中央へ送ると、フォンテスがボールを運び、左足で4点目を決めました。
見ている最中は、得点者が次々に変わることに夢中で、左足が続いているところまでは気づきませんでした。振り返ってみると、4人の入り方は別々なのに、最後の一振りだけがきれいにそろっています。その偶然が、前半の景色をちょっと特別なものにしてくれました。
45分の式田和、その先で4-2が止まった
ベレーザは45分に1点を返し、後半も浦和を押し込みました。それでも次のゴールには届かず、スコアは4-2のまま。次々に得点が生まれた前半とは違い、後半は2点差をめぐる緊張が続きました。
45分、北村菜々美が左からゴール前へ浮き球を入れ、式田が頭で決めました。ベレーザが2点差へ戻し、そのまま前半終了。浦和の4点目で流れが決まったようにも感じていた私は、この一撃に「後半も簡単には終わらない」と身構えました。
試合全体のシュート数は浦和9本、ベレーザ12本。前半は浦和7本、ベレーザ8本で、後半は浦和2本、ベレーザ4本でした。コーナーキックも浦和の0本に対して、ベレーザは5本。得点数とは反対に、シュートやコーナーキックではベレーザが上回っています。
ベレーザはハーフタイムに須長穂乃果から氏原里穂菜へ交代。60分に朝生珠実から小林里歌子、74分に村松智子と猶本から井手ひなたと松永未夢、82分に菊池まりあと長尾ののかから高塚映奈と櫻井まどかへ替えました。浦和は63分にフォンテスから川船暁海、71分に加藤と大西から柴田華絵と榊原琴乃へ交代しています。公式記録上、交代した選手は浦和が3人、ベレーザが6人です。それでも後半の得点は生まれませんでした。
(後半)ワンサイドには出来たものの、(相手の守りが)固くてなかなか破れなかったっていうのが正直なところです。
— 楠瀬直木監督、日テレ・東京ヴェルディベレーザ公式(2026年10月3日)
ベレーザを率いる楠瀬監督の言葉には、私もうなずきました。ただ、シュート数だけを見ても、浦和がいつ追い上げられるか分からない中で2点差を守った緊張までは伝わりません。ゴールが続いた前半の華やかさだけでなく、スコアを動かさずに終えた後半45分も、この勝利を形づくった大切な時間だったと思います。
勝点7は決着ではない――残る3試合への入口
浦和がこの勝利で手にしたのは、次の段階への進出決定ではありません。勝点は4から7へ増え、残り3試合を戦う位置が少し前へ動きました。4-2の先にある現在地は、ここです。
第4節を終えた時点で、浦和は勝点4の10位。一方のベレーザは勝点9の3位でした。浦和はこの試合の勝利で勝点7となり、ベレーザは9のままです。大きな一勝ではあっても、ここで何かが決まったわけではありません。
今季のリーグステージでは、各クラブが異なる8チームと計8試合を戦います。その全試合が終わった時点で、上位6チームが、負けたら終わりの勝ち抜き方式「ノックアウトステージ」へ進む仕組みです。第5節を終えた浦和には、まだ3試合が残っています。
次の第6節は10月10日14時から。相手はマイナビ仙台で、会場はこの試合と同じ浦和駒場スタジアムです。
だから私は、今の順位だけで結論を急ぐより、追いつかれた直後に丹野が相手のクリアしたボールを拾い、前へ運んで左足で決めた場面を次の観戦へ持っていきたいです。あのとき感じた「まだ前へ行ける」という頼もしさが、前半の驚きを一夜だけの記憶ではなく、残り3試合を見届けたい楽しみに変えてくれました。